シンガポール、5回連続で金融引き締め

【シンガポール=中野貴司】シンガポール金融通貨庁(MAS)は14日、金融政策を引き締め方向に変更したと発表した。引き締めは2021年10月以来、5回連続となる。14年ぶりの高水準のインフレが続いており、引き締め継続で鎮静化をはかる狙いだ。政府が同日発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は前年同期比で4.4%増となり、4~6月期の4.5%増とほぼ同水準だった。
MASは政策金利ではなく、自国通貨の為替レートの誘導目標を定める金融政策を採用している。今回は前回7月と同様に、「相場水準(位置)」をシンガポールドル高に誘導することで引き締めの効果をもたせた。
MASが利上げを継続するのは輸入製品価格や国内賃金の上昇によって、物価が上がり続けているためだ。直近の8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.5%の上昇と7月(7%)から伸びが加速し、約14年ぶりの上昇率だった。MASは14日、22年の物価上昇率が6%程度で着地し、23年も5.5~6.5%の高水準のインフレが続くとの見通しを示した。世界のエネルギー・商品価格の動向次第で予測が上振れするリスクもあるとしており、MASは今後も引き締めを継続する可能性がある。

7~9月期のGDPは前年同期比で4.4%増と堅調を維持した。新型コロナウイルス関連の行動規制が緩和され、来店客や海外からの観光客が増えた結果、宿泊・飲食・不動産分野が9.2%増となり、全体を押し上げた。一方、製造業は世界経済の減速を受け、1.5%増と伸びが鈍化した。GDPは前四半期比でも1.5%増となり、4~6月期の0.2%減から回復した。