鴻海と吉利、EVで合弁新会社 中台大手がタッグ

【台北=中村裕、北京=多部田俊輔】台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と中国民営自動車最大手の浙江吉利控股集団は13日、電気自動車(EV)の新会社を折半出資で設立すると発表した。設計から生産まで、EV事業に関わる全分野で協力する。EV業界で、台湾IT(情報技術)大手と中国自動車大手の強力な企業連合が誕生する。
新会社はEVの完成車から部品、ITシステムまで、EV事業全般を担う。両社のEVだけではなく、世界のEVメーカーに対しても車両供給を狙うのが特徴だ。取締役会のメンバーは5人で構成する。鴻海側からは、経営トップの董事長を含む3人を派遣し、吉利側からは2人を送り込む。
鴻海は、EV事業への参入を表明しているが、中国大手と新会社を設立し、表明したのは今回が初めて。欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)ともEVの共同事業を行う方向で交渉中だが、正式合意には至っていない。
最近は、米アップルがEV市場への参入を目指し複数の車メーカーと提携交渉を始めたことが明らかになった。中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は11日、吉利と提携し、自動運転技術を搭載したEVの製造販売に乗り出すと発表したばかりだ。
吉利が鴻海と提携したのは、鴻海がスマートフォンなどの製造を請け負う技術力を保有していることに加え、世界のIT大手と強い結びつきを持っているためだ。鴻海は吉利との提携で自動車製造のノウハウを得ることができる利点があり、世界のIT大手からのEVの製造受託をめざすとみられる。
自動車業界以外の大手企業が、既存の自動車大手と提携し、EV事業への本格参入が次々と明らかになり始め、EVの今後の成長に大きな弾みが付く段階に入ってきた。
鴻海の経営トップの劉揚偉董事長は13日、「吉利との提携は、自動車業界の発展に大きな発展をもたらすと期待している」とコメントした。吉利の李東輝最高経営責任者(CEO)も「鴻海との強力な提携で、業界の変革と価値向上を目指していく」と述べた。