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台湾が大規模軍事演習 中国軍の進攻懸念

ミサイル予算に9500億円

台湾軍は今後、長距離ミサイルの配備を急ぐ構えだ(20年1月、台中市)=ロイター

【台北=中村裕】台湾の国防部(国防省)は13日、中国軍の武力進攻を想定した大規模軍事演習「漢光演習」を全土で始めた。9月に入り中国軍機19機が台湾の防空識別圏に侵入するなど、再び緊張が高まっている。台湾は自衛力を強化するため防衛費を大幅に増額し、長距離ミサイルの配備を急ぐ。

漢光演習は年1回の定例軍事演習で、1984年に始まった。今年が37回目。陸海空軍が実弾を使い、離島も含め5日間実施する。

13日早朝に始まった初日の演習は、中国軍が情報収集を活発化する台湾東部を中心に、主力戦闘機「F16V」(米国製)や「ミラージュ2000」(仏製)を展開した。武力進攻への対応や連携を確認した。

演習は中国軍のミサイル作戦のほか、上陸作戦、電子戦、サイバー攻撃など、あらゆる進攻に対応する。15日予定の南部・屏東県の演習では、弾道ミサイル攻撃で空軍基地が破壊されたことを想定し、一般道路を代替滑走路としてF16などの離着陸訓練をする計画だ。

中国に比べ軍事力で大きく劣る台湾は、本土防衛を重視する「非対称戦」を念頭に、中国軍を可能な限り遠方で阻止する防衛構想を打ち出す。中国の進攻を遅らせ、米軍などの介入までの時間を稼ぐ狙いだ。

特に蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が力を入れるのは長距離ミサイルだ。台湾国防部のシンクタンク、国防安全研究院の蘇紫雲所長は「非対称戦で最も重要なのが長距離ミサイルの配備だ。戦闘機や戦艦などの配備に比べ安価に製造でき、中国への抑止力強化に効果的だ」と指摘する。

そのため国防部は現在2400億台湾㌦(約9500億円)の特別予算を組み、長距離ミサイルの量産や開発を中心とした関連法案を行政院(内閣)に提出する準備を進めている。早ければ16日にも閣議決定し、立法院(国会)で近く優先的に審議入りする段取りだ。

これとは別に、行政院は8月末、2022年の防衛費を過去最大の総額4717億台湾㌦とする予算案を閣議決定している。ミサイル関連の法案も可決すれば、長年4000億台湾㌦前後で推移していた台湾の防衛費は大幅増額となる。

台湾はもともとミサイルの自主開発に力を入れていた。ミサイル配備の密集度はイスラエルに次ぐ世界2位とされ、台湾全土に6000発以上が配備済みという。ただ射程40~200㌔㍍の対艦ミサイル「雄風3」など、中国大陸に届かない短距離ミサイルが主力だ。

射程600㌔㍍の対地ミサイル「雄風2E」も配備済みだが、数は少ない。ミサイル関連法案では、射程1200~2000㌔㍍の「雲峰」などの中長距離ミサイルの量産や開発も含め、体制整備を急ぐとみられる。

台湾を巡る偶発的な衝突のリスクは高まっている。中国は1日に領海での外国船航行を制限する「改正海上交通安全法」を施行。5日にはこれに反発した米空母が南シナ海を航行し、中国側は軍機侵入やミサイル駆逐艦の航行で対抗した。

中国側の発表によると、習近平(シー・ジンピン)国家主席は10日のバイデン米大統領との電話協議で、台湾問題への関与を強める米側を非難した。

台湾は自衛力強化に向けて予備役などの動員も強化する。国防部の傘下に新組織「全民防衛動員署」を22年1月1日付で設置することを決めた。中国軍の兵力は現在約200万人で、台湾軍は20万人弱と差は大きい。台湾には予備役が現在200万人前後いるとされ、新組織が主導して退役から8年以内の元軍人を来年から毎年26万人招集して戦力化する計画だ。

米国はトランプ政権時に中国への圧力を強め、台湾が要望したF16の新型機売却などを矢継ぎ早に決めた。ただオバマ政権時の17年までは中国に配慮し、台湾への武器売却を大きく減らしていた。そのため台湾の多くの兵器は老朽化してしまったのが現状だ。

世界の軍事力を毎年、分析する米グローバル・ファイヤーパワーによると、21年の軍事力ランキングは1位が米国、2位ロシア、3位が中国、5位が日本で、台湾が22位(20年は26位)だった。

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