米半導体輸出規制、中国がWTO提訴 日蘭は米追随協議

【北京=川手伊織、ワシントン=飛田臨太郎】先端技術を巡る米中の対立が一段と深まっている。中国は12日、米国の先端半導体などを巡る対中輸出規制が不当だとして世界貿易機関(WTO)に提訴した。米国は日本やオランダをはじめ同盟国に規制への追随を要請し、中国包囲網の構築を急ぐ。
米国は10月、スーパーコンピューターなど先端技術の対中取引を幅広く制限する措置を発表した。半導体そのものだけでなく製造装置や設計ソフト、人材も含めて許可制とした。中国商務省は12日夜の公表文で「典型的な貿易保護主義のやり方」だと批判した。
高性能な半導体や製造装置を輸入に頼る中国は自主生産にも力を入れてきた。米調査会社インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズによると、2015年に10%だった中国の半導体自給率は21年に24%まで上がった。今後は輸出規制が強い逆風となる。
米国は同盟国に追随を要請している。対中規制の効果を高めつつ、米企業が大きな打撃を受けないようにするためだ。米ブルームバーグ通信は12日、日本とオランダが足並みをそろえる方針で基本合意したと報じた。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は同日の記者会見で、協議が進んでいることを認め「幅広い連携が行われることを望んでいる」と強調した。
半導体製造装置市場は首位の米アプライドマテリアルズ、2位のオランダ・ASML、3位の東京エレクトロンが競り合う。米産業界は「対中規制で足並みをそろえないと、シェアを奪われる」と主張していた。
米国の規制は外国企業でも米国製の技術を使っていれば、対中輸出を認めない。韓国や台湾の企業は米国製の設計ソフトなどを活用するケースが多く、規制の網をかけやすい。ASMLや東京エレクトロンは米国に頼らず作れる製品が多いとみられる。
西村康稔経済産業相は13日の閣議後の記者会見で、9日のレモンド米商務長官との電話会談で対中規制を協議したと明らかにした。参加で基本合意したとの一部報道については「外交上のやり取りであり、答えを控えたい」と述べた。
米国の要請をうけ日本は同調する方向で検討を進めている。外為法で対応する場合は規制対象品目の追加などで関連する政省令の改正が必要になる可能性がある。日本政府内には「安全保障上、必要な措置であることの丁寧な説明が必要」との声がある。
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