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韓国、22年最低賃金5.0%増 文政権公約果たせず

時給1万ウォン未達に、「所得主導型成長」不発

(更新)
文政権の選挙公約「最低賃金1万ウォン」は任期中に果たされなかった=韓国大統領府提供

【ソウル=細川幸太郎】韓国の2022年の最低賃金が21年比5.0%増の9160ウォン(約880円、時給ベース)となる見通しだ。引き上げ率は過去最低だった前年(1.5%)から持ち直したものの、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の公約「最低賃金1万ウォン」は果たせぬまま。労働政策は22年3月の次期大統領選でも争点となる。

労使双方の有識者、学識経験者らで構成する最低賃金委員会が13日に協議結果を発表した。雇用労働相が8月上旬に正式に決定する見通しだ。

同委員会の幹事委員は5%の引き上げ理由について「コロナ後となる来年の景気回復を考慮した」と言及した。足元の韓国経済は半導体や自動車など輸出産業がけん引役となり、回復傾向が強まっている。韓国銀行(中央銀行)は21年の国内総生産(GDP)成長率見通しを4.0%と予想しており、景気拡大に合わせて賃金上昇が必要だと判断したという。

韓国の最低賃金は全国一律だ。9160ウォンは東京都の1013円と比べれば低いものの、日本の全国平均(902円)と同水準と言える。日本貿易振興機構(ジェトロ)が集計した、各国の正社員賃金の統計データによると、ソウルはシンガポールや北京などアジアの主要都市よりも高い水準となっている。

文氏は17年の大統領選挙で「所得主導型成長」を掲げて当選し、大統領就任後の2年間で最低賃金は29%上昇した。

しかし急激な賃金上昇が雇用悪化を招いたとの批判を受け、文政権は19年に1万ウォンの公約を取り下げた。20年は2.9%増、21年は1.5%増と過去最低を更新した。

経済協力開発機構(OECD)によると、韓国の全就業者に占める自営業者の比率は25%で、日本の10%、OECD平均の17%と比べて高い。急速な賃金上昇が飲食店や小売店などの自営業者の人件費負担に直結し、解雇や廃業につながった。

失業率は微増が続き、全年代の失業率4.0%に対して20代は9.0%と若者の雇用不安が深刻だ。韓国自営業研究院の権純旴(クォン・スンウ)院長は「賃金上昇とコロナで従業員を抱える30万の自営業者が廃業し、100万人ほどの雇用が失われた」と指摘する。

最低賃金の上昇が全体の所得増に波及していない問題もある。政府統計によると、19年の平均所得は2%増にとどまり、同期間の最低賃金の上昇幅(11%)を大きく下回った。

その一方で、不動産価格や株価は上昇を続ける。ソウルのマンション価格は文政権の4年間で8割も上昇し、マイホームに手が届かなくなった労働者も多い。富裕層の資産は増え続け、格差が一層顕著になっている。

特に資産を持たない若年層の文政権への不満は根強く、4月のソウル・釜山のダブル市長選での与党惨敗を招く結果となった。次期大統領選でも各候補者は労働政策の巧拙を厳しく問われることになりそうだ。

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