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台湾TSMC、売上高・純利益が過去最高 7~9月

(更新)
半導体の世界的な需給逼迫に加え、値上げの浸透でTSMCの収益環境には大きな追い風が吹く=ロイター

【台北=中村裕】半導体生産受託会社(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は14日、2021年7~9月期の売上高が前年同期比16%増の4146億台湾㌦(約1兆6750億円)になったと発表した。純利益は14%増の1562億台湾㌦だった。売上高、純利益ともに四半期ベースで過去最高を更新した。

売上高純利益率は37.7%と高水準だった。米アップルの新型スマートフォン「iPhone13」が発売され、主力の半導体の出荷が始まったほか、新型コロナウイルス禍からの経済活動の再開で半導体の需要が世界で一段と膨らみ、利益を大きく押し上げた。半導体不足が長期化しており、需給逼迫から半導体の値上げが進んでいることも奏功した。

TSMCの主力顧客は、アップルを筆頭に、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、半導体設計開発の台湾最大手の聯発科技(メディアテック)、米ブロードコム、米クアルコムなどが並ぶ。米国企業が中心で、半導体需給の逼迫で、昨年から続けてきた1~2割程度の値上げが顧客に浸透したことも、21年7~9月期の利益の押し上げ要因となった。

TSMCが現在、出荷する半導体は、世界の最先端品で、回路線幅が5ナノ(ナノは10億分の1)メートルのものとなる。先端品というだけでなく、品質、出荷量ともに安定しているため、TSMCに注文が殺到している。その分、TSMCの価格交渉力が年々強まっていることも利益増の背景だ。

一方、大きな課題も抱える。年初から顕著になった半導体不足は依然、解消の見通しが立っていない。自動車を中心に半導体不足が深刻で、世界中で自動車の減産が広がっている。世界最大市場の中国では、9月の新車販売台数が、半導体不足の影響などで206万台と、前年同月比で約2割減と大幅に落ち込んだ。

1年のうち最大の商戦期を迎えるなか、主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の新型機を8日に発売した任天堂にも半導体不足は直撃し、当面は計画通りに出荷が進まず、品薄状態が続く見通しだ。任天堂もTSMCの主要顧客の一つで、高性能なゲームを操る半導体を供給している。

こうしたなか、TSMCを中心に、業界に激震が走った。

長期化する半導体不足にしびれを切らした米商務省が9月23日、TSMCや韓国サムスン電子など主要メーカーに対し、顧客情報、在庫、リードタイム、注文、出荷状況などの内部の機密情報の提出を、45日以内に求める異例の通達を行った。

しかも、これに従わない場合は、米政府が産業界を直接統制できる権限を持つ「国防生産法」(DPA)を行使し、「情報提出を強制する案が検討されている」(台湾の半導体メーカー首脳)とあって、業界は騒然としている。

米当局は、半導体の供給不足の解消が進まない理由は、メーカーが何かの意図を持って在庫を抱え込んでいるか、もしくは、不透明な半導体の出荷の流れにあるとみているようだ。つまりは半導体メーカーに対する不信感だ。ここをクリアにしない限り、半導体不足の解消にはつながらないとみて、大なたを振るおうとしている。

情報提出の期限は11月8日。だが、米政府の姿勢に対し、TSMCや台湾当局などは当然のように、反発姿勢を強めている。顧客情報や在庫、リードタイムなどの情報は、その企業の営業機密、ノウハウそのものともいえる。それを45日以内に提供を求めるというのは「米国の横暴なやり方そのものだ」(台湾の半導体関連メーカー首脳)との強い反発の声があがる。現在も台湾当局と米当局との間で、情報提供のあり方を巡り、調整作業が進む。

半導体の世界的な需給逼迫はTSMCに重い課題を突きつけ、新工場建設を急がせている(7月、台湾・新竹)

メーカー側は、自社の内部情報が、米当局に近いライバルの米インテルにも流れかねない事態も恐れている。TSMC、サムスン、インテルの3社は現在、世界で最先端の半導体を巡って、激しい開発競争を続けている。その最中でもあり、特に情報管理には神経を尖らせている状況にあるためだ。

TSMCの劉董事長は、半導体の需給逼迫が解消されない理由について「(複雑な)サプライチェーン(供給網)の中で、だれか(意図的に)半導体を買いだめしている人がいるようだ」と指摘するなど、やはり、現在の半導体不足の原因を詳細に突き止めるのは、容易ではなさそうだ。

半導体不足の解消に向け、TSMCは今後も巨費を投じ、台湾を中心に積極的な設備投資を続ける方針。だが、業界で年内に半導体不足が解消されるのはほぼ絶望的だ。「22年の下半期まで時間を要することになりそうだ」(台湾の半導体設備関連メーカー首脳)というのが、業界の共通認識として広がりつつある。

台湾が生産の中心となり、世界に出荷される半導体の不足を根源とした今のインフレ圧力も当面、解消されることはなさそうだ。

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