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韓国SK、石油から水素へ 米燃料電池出資でノウハウ取得

プラグパワーは水素燃料のサプライチェーンを構築する

【ソウル=細川幸太郎】韓国SKグループが水素エネルギー事業を急ピッチで拡大している。3月までに米燃料電池メーカーのプラグパワーの株式9.9%を1兆6000億ウォン(約1500億円)で取得し筆頭株主となる。グループ横断で水素の供給網を確立し、海外展開も視野に入れる。油田開発から石油精製、給油所運営を手掛ける「石油のSK」が水素インフラの担い手へと事業変革に動き出した。

プラグパワーは1997年設立で、燃料電池の生産のほか、液化水素プラント、水素ステーションの整備といった水素燃料の供給網の構築でノウハウを持つ。米アマゾン・ドット・コムや米ウォルマートの巨大物流センターに燃料電池フォークリフトを導入した実績もある。

米ナスダック市場に上場しており、水素燃料の需要拡大期待やESG(環境・社会・企業統治)銘柄として投資家に人気で、2020年の1年間で株価は11倍に上昇した。足元ではSKとの資本提携に加え、仏ルノーグループとの小型商用車事業での合弁設立を発表したことで、年明けから株価は2倍に高騰。現在の時価総額は3兆円を誇る。

SK持ち株会社と、子会社でエネルギー事業を手掛けるSK E&Sが、プラグパワーの第三者割当増資を引き受ける形で8000億ウォンずつ出資する。SKはプラグパワーのノウハウを取り込み、韓国内での水素燃料の生産や蓄積、供給のサプライチェーンを構築する。燃料電池車(FCV)の普及のカギを握るインフラ整備に乗り出す。

巨額投資を決めたのは、世界的に脱炭素の動きが広がっているためだ。SKの崔泰源(チェ・テウォン)会長はかねて「株主は持続可能な企業を評価する。ESG活動は未来の顧客への投資だ」と語り、環境配慮型企業への転換の重要性を説いていた。

同社は19年にSK E&Sや石油関連のSKイノベーション、SK建設などエネルギー関連のグループ会社から人材を集めて「水素事業推進チーム」を新設し、長期戦略を検討してきた。23年に仁川市で年間3万トンの液化水素の生産プラントを整備し25年には28万トンに能力を増強する計画だ。

SKグループは半導体のSKハイニックスや通信のSKテレコムが収益の柱で、SKイノベーションなどが手掛ける石油関連事業が売上高の2割程度を占める。脱炭素が潮流となる中で、既存の設備や人員が負の遺産となる可能性があった。

プラグパワーは水素燃料の生産・貯蔵・活用の各工程のノウハウを持つ

プラグパワーのノウハウを取り込み、韓国内で3070カ所運営する給油所を将来的に水素ステーションに転換することも可能だ。SKは韓国内で事業モデルを確立し、アジア地域でも水素インフラの事業を展開する計画だ。プラグパワー側としてもアジア地域で幅広い事業を手掛けるSKと組むメリットが大きい。両社は合弁会社を中国やベトナムに設立するなどアジア地域での協業も検討すると表明している。

グループ売上高16兆円規模の韓国財閥3位のSKは1939年に織物の輸入販売業として創業した。80年に大韓石油公社(現・SKイノベーション)、94年に韓国移動通信(SKテレコム)、12年にハイニックス半導体(SKハイニックス)と次々と買収し、エネルギーと通信、半導体が3本柱のコングロマリットを形成してきた。プラグパワーへの出資をきっかけに水素エネルギー会社への構造転換を進める。

水素社会の到来を見越して韓国企業が動きを速めている。筆頭はFCVで先行する現代自動車だ。乗用車ブランド「NEXO(ネッソ)」を展開し、黎明(れいめい)期の同分野でトヨタ自動車や米ゼネラル・モーターズ(GM)を抑えて販売台数で世界首位を維持する。トラックなど商用車の開発も続けている。

現代自は20年12月に水素燃料電池システムの新ブランド「HTWO(エイチツー)」を発表し、自動車に限らず産業機械など向けにも販売して30年までに70万基の燃料電池システムを販売する目標も打ち出した。

中堅財閥のハンファは韓国で水素燃料をエネルギー源とする次世代発電所を整備。可燃性の水素を安全に運ぶ高圧タンクを手掛ける米ベンチャーを買収するなど水素社会に求められる製品群をそろえようとしている。

韓国政府は水素関連で、21年に前年比3割増の8000億ウォンの研究開発やインフラ整備の補助金を用意することを決めた。国内4都市を「水素モデル都市」としてオフィスや家庭の電気を水素燃料で賄う実験を始めるなど、国を挙げたエネルギー転換を進めようとしている。

日本は17年、各国に先駆けて「水素基本戦略」を策定。このほど戦略の見直しに動き、30年時点で国内の水素利用量を1000万㌧に引き上げることを目指す。岩谷産業川崎重工業とオーストラリアの鉄鉱石生産会社と協力し、再生可能エネルギー由来の電力で水素を製造・液化し、日本へ輸入する事業に向けた検討を始めた。水素の主導権を巡り、官民を交えた国家間競争が本格的に始まっている。

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