マレーシア、コロナで非常事態宣言 政権延命の可能性 - 日本経済新聞
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マレーシア、コロナで非常事態宣言 政権延命の可能性

【シンガポール=中野貴司】マレーシアのアブドラ国王は12日、非常事態宣言を発令した。新型コロナウイルスの感染拡大が続いているためで、発令期限の8月1日まで総選挙は実施しない。ムヒディン政権は与党連合内の対立で崩壊の危機にあったが、宣言の発令が延命につながる可能性がある。

マレーシア王室の12日の声明によると、ムヒディン首相が11日夕の国王との面会で非常事態宣言の発令を提案。「国王は新型コロナの感染拡大が危機的な水準にあることから、憲法に基づき宣言を発令する必要があると判断した」という。政府は11日には、州を越える移動を全土で禁止するなど国民や企業に対する規制の強化を発表していた。

ムヒディン氏は王室の声明発表後にテレビ演説し、非常事態宣言の発令中は総選挙や地方選挙、補選を実施しないと明言した。国会も国王が再開を決めるまで開かず、国王が重要な政策を実施する必要があると判断すれば勅令を発布する。ムヒディン氏は演説で「これは軍事クーデターではなく、夜間外出禁止令なども発令されない」と述べ、国民に理解を求めたが、国会の事実上の機能停止は国内の政治状況に大きな影響を与える。

2020年3月に発足したムヒディン政権は辛うじて国会の過半数を維持する状況が続いており、与党連合の中で最大の議席数を持つ統一マレー国民組織(UMNO)からも早期に解散・総選挙を実施するよう突き上げを受けていた。非常事態宣言の発令によって、国会で首相不信任決議案が可決されるリスクが当面なくなったほか、総選挙の実施を先送りする名目が立った。野党側も国王が非常事態を宣言する中で、倒閣に動きづらくなるため、宣言の発令には結果的にムヒディン政権を利する効果がある。

マレーシア憲法は、国王が安全保障や経済生活、公共の秩序が脅かされる深刻な緊急事態を認めた場合、非常事態宣言を発令できると定める。地元紙によると、全土への非常事態宣言の発令は1969年以来、約半世紀ぶりとなる。ムヒディン氏は20年10月にも発令を国王に要請したが、その時は国王が「必要がない」と却下していた。

今回の宣言は、与野党の議員や医療の専門家らで構成する独立委員会が新型コロナの早期収束で継続の必要性がないと判断すれば、8月1日より前に終了することもある。ムヒディン氏は12日のテレビ演説で「独立委員会が選挙が安全に実施できると判断すれば、すぐに総選挙を実施し、国民に政権選択の機会を与えると約束する」と主張した。

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