エア・インディア、タタ傘下で運営改善 定時運航率首位

インド財閥大手タタ・グループが1月に傘下に収めた航空大手エア・インディアのサービスの改善に乗り出している。長らく国営企業だった同社に運営ノウハウを注入。定時運航率が向上するなど成果も出てきた。タタはグループ各社との合併で経営効率化も進め、低迷続きだった旅客シェアの向上を目指す。
「エア・インディアが、最も時間を守る航空会社になった」。同国大手メディアは11月下旬、同社の「快挙」を相次いで報じた。当局が発表した10月の国内航空市場統計で、主要空港におけるエア・インディアの定時運航率が90.8%でトップとなったためだ。
同社はもともとタタのグループ会社として設立され、1953年に国営化。近年は格安航空会社(LCC)などとの競争にさらされ、経営が悪化していた。
サービスの悪さは特に有名だ。同国南部ベンガルールで働く30代の日本人男性は「機材が旧式で、乗っているだけで疲れる」とこぼす。ムンバイで暮らすインド人男性も「最も予測不可能な航空会社だ。荷物の紛失なども多い」と不満げだ。
エア・インディアの2021年10月の定時運航率は75.1%と、主要航空会社で最低だった。同月の乗客1万人あたりの苦情件数は3件と、全体(0.57件)を大幅に上回っていた。
転機は約70年ぶりとなるタタの傘下入りだ。インド政府は苦戦するエア・インディアの売却を決め、タタが今年1月に買収した。
タタは豊富な資金力を生かし、機材調達や新規採用、人員研修などを積極化。地元メディアによると、顧客サービスの改善に向けたチームも立ち上げたという。こうした取り組みが、定時運航率の首位につながった。
タタはエアアジア・インディアやビスタラといった航空会社を抱え、今後はエア・インディアを軸に再編する方針だ。23年末までにエア・インディアのLCC子会社と、エアアジアを合併。24年にはエア・インディアと、シンガポール航空との合弁であるビスタラと合併する計画だ。
グループ統括会社タタ・サンズのチャンドラセカラン会長は日本経済新聞の取材に対し「各社が分かれていては、ネットワークの最適化ができない」と再編の狙いを語った。ただ、ブランドの一本化については「議論が続いている」と明言を避けた。
エア・インディアは今後5年で国内旅客シェア30%をめざす。今年10月時点では9.1%と、首位のインディゴ(56.7%)とは大きな開きがある。それでもビスタラ(9.2%)、エアアジア(7.6%)の3社を単純合算すれば25%を超え、目標達成は現実味を帯びている。
インドの1~10月の国内航空旅客数は9800万人と、前年同期と比べて59%増えた。新型コロナウイルス禍から回復しつつある市場の恩恵を受けられるか。タタの手腕が問われる。
(ムンバイ=花田亮輔)
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