李在明氏、薄氷の勝利 韓国大統領選で与党選出
疑惑捜査の行方が焦点

【ソウル=恩地洋介】韓国与党「共に民主党」は、2022年3月に実施される大統領選の公認候補に、李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事を選んだ。党員などの投票でかろうじて過半数を獲得した。世論が文在寅(ムン・ジェイン)政権に厳しい目を向けるなか、政権維持へ危機感を持つ党員らは、傍流ながら行動力に定評のある知事を選んだ。
「私は国会議員の経験が一度もない辺境のアウトサイダーです」。李在明氏は10日の受諾演説で党の傍流であることを自ら強調した。文政権が求心力を失うなか、主流派の親文在寅勢力と距離を置く存在であることが最大の勝因だったからだ。
4月のソウル・釜山市長選は、不公正な政権運営に不満を抱く民意を受けて与党が惨敗した。勢いを失った親文勢力は、予備選の主導権を握れなかった。保守系野党が支持を伸ばすなか、「保守に勝てる候補者」は強力な発信力が持ち味の李氏しかいなかった。
もっとも、李在明氏にとって10日はきわどい勝利だった。累計で50.29%を得票し、かろうじて過半数を維持したが、一般公募の3回目のオンライン投票は28%の得票どまり。62%を得票した2位の李洛淵(イ・ナギョン)元首相とダブルスコアの差をつけられた。
李在明氏の支持に影を落とすのは、2018年まで市長を務めた京畿道・城南(ソンナム)市の都市開発を巡る疑惑だ。資産管理会社とその関連企業が莫大な配当を受けていた。検察は李氏の側近を逮捕し、野党は李氏の関与を激しく追及している。
大統領選の候補選出をめぐって党の結束は綻びを見せている。敗れた李洛淵氏は11日、党選挙管理委員会に異議を申し立てて決選投票の実施を求めた。途中で辞退した候補の無効票の取り扱い次第で、李在明氏の得票は規定の過半数に届かなくなるからだ。
現時点で世論の動向は読みにくい。韓国ギャラップが8日に公表した世論調査で、保守系野党への政権交代を望んだ人は52%に上ったが、個別候補への支持では李在明氏が野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長を5ポイント上回った。野党が政権批判の受け皿になりきれていないのが実情で、選挙戦の行方は現時点では混沌としている。