韓国検察、最大野党代表を聴取 24年国会選へ与野党対立

【ソウル=甲原潤之介】韓国検察は10日、市長時代の不正疑惑の取り調べで最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表から事情聴取した。李氏は疑惑を否定し「捜査権の乱用」と主張している。検察は複数の疑惑の捜査を本格化する。2024年春の次期国会議員選を視野に、与野党の対立が激しくなってきた。
韓国メディアによると、同国で野党第1党の代表が検察に出頭して取り調べを受けるのは初めて。李氏は22年12月に出頭要請を受けた際に応じず、日程を再調整していた。
検察は李氏が京畿道城南市長だった16~18年にオーナーを務めていたプロサッカーチームを巡る疑惑を捜査している。聯合ニュースによると、企業から170億ウォン(約18億円)の後援金を集め、見返りに便宜を供与した疑いがある。

李氏は出頭に先立ち、記者団に「間違ったことはなく、避ける理由もないので堂々と立ち向かう」と話した。「広告を誘致して税金を節減しただけだ。検察の歪曲(わいきょく)とでっち上げは想像を絶している」と強調した。
李氏は22年3月の大統領選に出馬し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に僅差で敗れた。同年6月の国会議員の補欠選挙で当選し、8月には民主党代表に就いた。民主党は李氏への捜査を「政権による弾圧だ」と批判する。
李氏には市長時代に手掛けた大庄洞(テジャンドン)の都市開発を巡る事件でも疑いがかけられている。出資比率が7%にすぎなかった民間の事業者が、過半を出資する開発公社の2倍以上にあたる4000億ウォンの利益を得ていた。李氏の関与の有無が焦点になっている。
一部の韓国メディアは、検察が疑惑の「本丸」と位置づける大庄洞の事件でも李氏への出頭要請が避けられないと報じている。
与野党は李氏への捜査の進展を機に対立を深めている。民主党は22年12月に北朝鮮が無人機を韓国領空に侵入させた事案の真相を究明すべきだと主張して臨時国会の開催を提案。国会で多数派の民主党が単独招集する形で9日、会期に入った。
憲法の規定で、国会の同意を得ずに会期中に国会議員の身柄を拘束することはできない。このため検察は容疑を固めたとしても李氏の逮捕は難しく、在宅起訴になるとの見方がある。与党「国民の力」は李氏を拘束させないための臨時国会だと批判する。
民主党内には李氏の「司法リスク」への懸念がある。民主党の支持率が下がる場合は李氏に離党を求めるとの声も聞かれ始めた。捜査の進展次第では辞職要求が強まる可能性がある。
尹政権には、捜査を本格化させることで野党の分裂を促す思惑がありそうだ。
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