ビングループ、スマホ・TV生産停止 販売不振で

【ハノイ=大西智也】ベトナム複合企業最大手のビングループは9日、スマートフォンとテレビの開発・製造を中止すると発表した。販売不振が続いており、今後も成長が見込めないと判断したもようだ。ビングループは2019年末以降、小売事業の撤退や航空事業への参入を断念するなど、事業の再構築を急いでいる。
同社は「(既存設備を)自動車や家庭向けのスマートソリューション関連に切り替える」と説明している。販売済みの製品の保証や修理などは継続する。製造中止時期については言及していない。
子会社のビンスマートが18年にスマホ、19年にテレビ事業にそれぞれ参入した。スマホは首都のハノイ市などで生産していた。会社の発表によると、スマホ工場の年産能力は1億2500万台で、低価格を武器に販売拡大を狙った。
市場調査会社、カナリスによると1~3月のベトナム国内でのビンスマートの販売シェアは約10%で、韓国サムスン電子、中国OPPO(オッポ)などに続き4位だった。海外向けではロシアやミャンマーなどにも輸出していた。
テレビはこれまでに5モデルを販売していたが、詳細な販売台数は明らかにしていない。スマホ、テレビのいずれも販売台数は会社の想定を下回っていたもようだ。
ビングループが最も力を入れている自動車事業では、子会社のビンファーストが11月に電気自動車(EV)の販売を計画している。米国でのEVの販売や工場の建設も模索している。ただ、20年の自動車販売台数はベトナム国内で約3万台にとどまる。
ビングループの20年12月期の純利益は19年比42%減の約4兆5000億ドン(約210億円)だった。中核の不動産事業は好調だが、不採算のスマホやテレビ事業の中止が明らかになったことで、自動車事業の先行きを不安視する声も出ている。