/

韓国、新捜査機関、来年1月にも発足 改正設置法が成立

検察総長の懲戒は持ち越し

(更新)

【ソウル=恩地洋介】韓国検察に代わり政府高官の汚職などを捜査する新組織の改正設置法が10日、韓国国会で成立した。2021年1月にも発足し、国会議員など高位公職者に対する検察の捜査権限を縮小する。韓国法務省が同日開いた尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長への懲戒処分を審議する懲戒委員会は結論を持ち越し、15日に改めて審議することとなった。

韓国の秋美愛法相㊧と尹錫悦検察総長=聯合・共同

10日の国会本会議では、検察改革の柱である「高位公職者犯罪捜査処」を設置するための改正法が成立した。保守系野党は前日から、長時間の演説で議事を妨害する「フィリバスター」という手法で抵抗したが、議席数の3分の2近くを占める革新系与党が数の力で押し切った。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は成立を受け「長年の宿願だった。国民との約束が守れて非常に感慨深い」と述べ、捜査処を21年1月の早い時期を目標に発足させるよう指示した。

高位公職者犯罪捜査処は、大統領や国会議員、政府高官の汚職などを専門に捜査する機関だ。起訴権は検察に残るが、高位公職者に対する捜査権は新組織が優先的に行使できる。今年1月には検察の警察に対する捜査指揮権を廃止する法律が成立している。大統領経験者らを次々と逮捕、起訴してきた韓国検察の力の源泉である強力な捜査権をそぐ狙いだ。

トップ人事は事実上、与党の推薦で選ばれ、政権に近い弁護士らを起用することも可能になる。政権に不利となる犯罪捜査が難しくなり、政権の意向を踏まえた捜査が進められかねないとの指摘がある。

検察改革は盧武鉉元大統領ら歴代の革新系政権が実現を目指したが、検察側の抵抗で頓挫してきた経緯がある。検察との対立劇で、文政権の支持率は30%台の水準に落ち込んでいるが、政権内には改正法成立によって、22年3月の次期大統領選に向けた革新支持層の結集につながることへの期待がある。

ただ、検察改革に抵抗を続ける尹検察総長との対立は終わっていない。秋美愛(チュ・ミエ)法相は11月、尹氏側近に対する監察の妨害や、メディア関係者との不適切な接触など6つの理由を挙げて、尹氏への懲戒を請求した。韓国メディアによると、秋氏は解任を含む厳しい懲戒処分を模索した。

懲戒委は法相と法務次官、法相が指名した検事や学識経験者ら7人で構成し、検事懲戒法に基づき、解任や停職、減給などの処分を審議する。10日の委員会に尹氏本人は出席しなかったが、代理人の弁護士を通して懲戒阻止を試みた。

弁護士は、懲戒の請求者である秋氏が委員会を招集するのは違法との立場で「懲戒は違法で不当だ」と主張した。「公正性が担保されていない」として弁護士が懲戒委に申し立てた4人の委員の排除は棄却されたが、尹氏側が申請した追加証人の出席が認められたため、15日に改めて審議することになった。

尹氏は「検事懲戒法を検察総長に適用するのは違憲だ」と憲法裁判所に訴えている。懲戒の請求者である秋氏が招集した委員会の審議では公正性が担保されず、韓国の憲法が定める平等権と公務担任権が侵害されたとの主張だ。厳しい処分が下れば、懲戒の効力停止を求める仮処分を行政裁判所に申請するとみられ、法廷闘争が続く可能性がある。

文政権は権力機関改革の一環で、情報機関の改革も掲げている。国会では北朝鮮スパイの捜査権を情報機関から警察に移管する国家情報院法改正案が11日にも成立する見通しだ。

北朝鮮に関する情報収集は継続するが、捜査権を切り離すことによる能力低下を懸念する声もある。国家情報院は朴正熙政権が設けた中央情報部(KCIA)が前身だ。文大統領をはじめとする革新系勢力には民主化運動の経験者が多く、スパイ捏造(ねつぞう)事件などで弾圧を受けた記憶が残っている。

与党は一両日中に、南北の軍事境界線近くで北朝鮮に向けてビラを飛ばす行為を禁止する南北関係発展法改正案の採決にも踏み切る。

同改正案は5月に韓国の脱北者団体がビラをくくり付けた大型風船を飛ばしたことが発端だ。北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が文政権を激しく批判し、開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破した。それ以降、南北関係は行き詰まったままだ。

財閥の経営監視を強化、独立監査委員の選出促す

【ソウル=鈴木壮太郎】韓国国会は財閥の経営監視強化を狙った商法など「経済3法」の改正・制定案を可決した。経営陣から独立した監査委員の選任を促すほか、財閥の内部取引規制の対象企業を増やし、オーナー一族が経営を私物化しにくくする。

商法改正の柱は監査委員の分離選出だ。韓国では資産総額が2兆ウォン(約1900億円)以上の上場会社は「監査委員会」の設置が義務付けられている。従来は取締役の中から監査委員が選ばれるため、オーナー一族の意向が反映されやすかった。取締役と監査委員を分離し、監査委員の選任時にオーナー一族の議決権を制限することで、経営からの独立性を高める。

公正取引法の改正でオーナー一族が出資する企業への規制の網を広げる。現行は出資比率が上場企業で30%超、非上場企業は20%超の企業が対象だが、一律20%にして対象企業を増やす。オーナーに不当に有利な取引があった際に課す課徴金の上限も2倍にする。

「金融グループ監督法」も新たに制定する。既存の法体系では監督対象外だったサムスンや現代自動車、未来アセットなど非持ち株会社の6グループも監督対象に含まれるようになる。

経済3法の改正・制定は文在寅(ムン・ジェイン)政権が掲げる財閥改革の一環だ。財界は監査委員の分離選出への抵抗が特に強く「外資系の投資ファンドなど敵対勢力が監査委員になり、技術流出や短期的な増配要求など副作用が大きい」(韓国経営者総協会)などと強く反発した。

財界の抵抗を受け、監査委員選出時の最大株主の議決権制限は緩和された。公取法改正は公取委の「専属告発権」を廃止し、市民団体なども公取法違反を告発できるようにするのが目玉だったが、これも見送られた。革新陣営からは「法案は骨抜きにされた」との批判が強まっている。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン