中国「二人っ子」政策、効果乏しく 出生数減少止まらず
【北京=川手伊織】中国の2020年の新生児は戸籍登録ベースで前年比15%減少した。出生数の減少に歯止めがかからないのは、子育て世帯にとって養育コストの高さに加えて、将来の所得不安が重荷となっている可能性がある。すべての夫婦に2人まで出産を認める「二人っ子」政策の効果は乏しく、少子高齢化の加速は避けられない。
中国公安省が集計した戸籍登録ベースの新生児は、生まれた年に登録手続きをした子のみだ。翌年に届け出た新生児は含まないため、中国国家統計局が発表する各年の出生数とは異なる。

直近19年の出生数は1465万人と、3年連続で前年を下回った。中国当局は1980年ごろから続けた「一人っ子政策」を撤廃し、16年に全面的に2人目の出産を認めた。しかし、出生数が増加したのは16年限り。出産適齢期の女性も25年までの10年間に約4割減り、出生数の減少は今後も続く公算が大きい。
夫婦が出産をためらう新たな要因として、将来の所得不安が挙げられる。新型コロナを早期に抑え込んだ中国経済は企業部門を中心に正常化したが、家計の所得は回復ペースが緩やかだ。1人あたり可処分所得の伸びは大きく鈍った。
中国人民銀行(中央銀行)が20年10~12月に実施した預金者向けアンケート調査をみると、収入が「減った」との回答は14.0%と3.1ポイント減ったが、「増えた」との回答も15.3%で0.5ポイント減った。経済正常化の恩恵が家計に行き届いていない。
子育て費用の高さも出産意欲を弱める大きな要因だ。公立幼稚園が構造的に不足しているうえ、大都市では就学前から過剰な塾通いが始まる。1人の子供が高校を卒業するまでにかかるコストは北京や上海で250万元(約4000万円)前後に及ぶとの試算もある。
中国共産党は21年から始まる新たな5カ年計画の草案で「出産政策を合理化し、出産・養育・教育コストを下げる」と掲げた。子育て費用の軽減策などの議論を加速させそうだ。
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