中国、反外国制裁法が成立 米欧の制裁に報復

【北京=羽田野主】中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で10日、外国が中国を制裁した場合に報復する「反外国制裁法」が成立した。米欧などの対中制裁に対抗する体制を整える。中国外務省は「やられたらやり返す」と公言しており、米欧との摩擦が激化しそうだ。
法律の詳しい内容は明らかになっていないが、中国国営の新華社は立法目的について「外国の差別的な措置に反撃するための強力な法治による支援と保障が必要だ」と伝えた。

中国はこれまで米欧などから制裁を科された場合、相手の制裁内容と同程度の報復制裁で対抗してきた。しかし、法的根拠が整ったことで、今後はより強力な報復措置を発動できるようになるとの見方もある。
中国外務省の趙立堅副報道局長は8日の記者会見で「西側の一部は新疆ウイグル自治区や香港などさまざまな口実を利用して中国を締め付けている」と述べ、立法の必要性を主張した。「乱暴に中国の内政に干渉している」とも話し、同法で対中制裁に報復する構えをみせた。
習近平(シー・ジンピン)指導部は米国や欧州連合(EU)、英国、カナダが3月に新疆ウイグル自治区の人権侵害を理由に対中制裁を発動したことで立法作業を加速したようだ。
全人代常務委で新法の審議を始めたのは4月で、審議回数はわずか2回。新法は3回の審議で採決するのが通例だ。2回の審議で急ぎ成立させたのは2020年に制定した、香港への統制を強める香港国家安全維持法などに限られる。習指導部が早期成立に強い意思をみせた形だ。
中国が新法をもとに対抗措置に出れば米欧などと報復の連鎖に陥る可能性もある。すでに、中国がEUに報復措置をとったのをきっかけに、中国とEUが大筋合意した投資協定は欧州議会での審議が凍結になっている。