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中国、中小企業支援に5兆円枠 低利借り換え促す

卸売物価13年ぶり高い伸び 価格転嫁進まず

消費需要を喚起するため値引きセールを実施するアパレル店(7月、北京市)

【北京=川手伊織】中国人民銀行(中央銀行)は9日、中小零細企業に低利で借り換えを促すため3000億元(約5兆1000億円)の資金枠を設けると発表した。資源高でコストが上がっても価格転嫁は遅れ、企業の資金繰りが苦しくなっているためだ。景気の減速感が強まるなか、就業者の8割が働く中小零細企業の支援に注力し、雇用の安定にも目配りする。

年末までに条件を満たした中小銀行に優遇金利で貸し出す。銀行が中小零細企業や個人事業主への融資を増やし、融資先の借り入れコストを軽くするよう促す。

政府は新型コロナウイルスがまん延した昨年以降、元利返済の猶予などで中小零細企業の資金繰りを支えてきた。猶予対象は7月末までに12兆5000億元に達した。今回、支援策を追加する背景をめぐり、人民銀行の潘功勝副総裁は7日の記者会見で「中小零細企業が原材料価格の高止まりによる生産コストの上昇や売掛金の増加といった課題に直面している」と語った。

中国国家統計局が9日発表した8月の卸売物価指数は前年同月比9.5%上昇した。伸び率は2008年8月以来、13年ぶりの高さとなった。電力需要で価格が上がった石炭などの資源高が素材や中間財に波及している。石油・石炭加工、鉄鋼、非鉄金属加工、化学原料などは前年同月の水準を2~4割上回った。

最終製品はさえない。衣類、日用品、自動車など耐久消費財はいずれもほぼ横ばいだった。8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は0.8%と、3カ月連続で縮小した。中国人の食卓に欠かせない豚肉が45%下落した影響も大きい。ただ消費者の購買力を映す食品とエネルギーを除くコア指数でみても、伸び率は1.2%と、7月の1.3%から鈍った。

エコノミストは価格転嫁の進捗を分析するうえで、卸売物価指数とコアCPIの伸び率の差に注目する。8月は8.3ポイントで、08年8月以来の大きさとなった。国際商品市況の回復で資源価格は上がったが、消費回復のもたつきや政府による価格統制で販売価格の引き上げは遅れている。中小零細企業のコスト吸収は厳しさを増している。

政府は借り換え支援のほか、今夏に新型コロナの感染が再拡大したことで被害を受けた企業向けに利子補給する。中小零細企業に認めた元利返済の猶予期限が今年末に迫るなか、期限切れ後の支援策の検討も急ぐ。

人民銀行は7月、市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す預金準備率を引き下げた。銀行の資金コストを下げ、中小零細企業の資金繰りを支援するのが狙いだ。金融市場には年末までに再度引き下げるとの予測も出ている。

中国では就業者の8割が中小零細企業で働く。資金繰り難で経営がぐらつけば、政府が重視する雇用の安定にも影響が出かねない。1~7月の都市部の新規雇用は822万人と、通年目標の75%に達した。目標達成は可能とみられるが、新型コロナ前の19年同時期を5%下回る。

政府は中小支援策の積み上げに力を入れるが、肝心の景気は減速感が強まっている。雇用の受け皿である中小零細企業の景況感が改善するには時間がかかりそうだ。

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