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中国、金融開放の拠点に海南島 基本法成立

人材不足など課題

免税政策の拡充で海南島の旅行消費は増えてきた(5月)

【浙江省杭州=川手伊織】中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は10日、最南端のリゾート地、海南島を自由貿易港にする基本法を可決した。同島に進出する国内外のファンドに国境をまたぐ投資を一部認める。金融開放の拠点と位置づけるが、米中対立や人材不足への対応など課題は少なくない。

国営新華社が伝えた。中国政府は2020年6月、自由貿易港建設の総合計画を示した。25年までに原則関税をゼロにし、企業や個人向けの税優遇も設ける。10日成立した基本法は自由貿易港に関する法的根拠となる。

中国人民銀行(中央銀行)など金融当局は4月、海南島の金融開放に関する方針を打ち出した。特定の外国ファンドに中国の未公開株への投資枠を与え、一定の範囲内で海外との自由な送金も認める。海南島の企業に対し、外国銀行の融資など海外から調達できる資金の限度額を引き上げる。

海外への投資も促す。中国ファンドは当局から特別枠を得れば、海外の未公開株などに投資できる。全体の限度額は50億ドル(約5500億円)だ。新型コロナウイルス前は、資金流出を警戒して対外投資を規制してきたが、人民元の国際化もにらみ規制を緩める。

中国は米欧との外交摩擦が激しくなっているが、経済的な孤立は避けたいのが本音だ。金融や貿易で対外開放の姿勢を明示するのは、海外からも企業や人材を誘致する狙いがある。金融面では香港の機能を一部分散させたいとの思惑もありそうだ。

中国政府は対米摩擦の長期化をにらみ、内需の拡大を急いでいる。海南島の改革は、海外に流れていた需要を国内に引きとどめる狙いもある。象徴的なのが、日本の一部都市などが中国人需要を取り込もうとしてきた医療ツーリズムだ。

中国が4月に国際会議を開いた海南省博鰲(ボーアオ)地区で、医療ツーリズムの受け入れ計画が進む。東京ディズニーリゾート(テーマパーク部分)の20倍に相当する約2000万平方メートルの区域に、病院など16の医療関連施設を集積させる。

すでに開設した総合医療センターは会員制で、リハビリ医療などを施す。患者が長期滞在しても飽きないよう、書道や茶道など趣味のスペースを設け、衣装を借りてファッションショーを開ける舞台まで備えた。担当者は「中国全土から富裕層が集まる」と語る。

海南島での改革を先行事例とし、その成果を中国大陸に還元する狙いもある。中国政府は同島を「クリーンエネルギー島」と位置づけ、30年までにクリーンエネルギーの発電容量を85%前後に高める。30年には旧来のガソリン車などの販売をやめる計画も掲げる。

不動産改革の拠点にする案もある。中国財政省などは不動産価格の高騰抑制や地方財政の安定のため、複数の都市で不動産税の試験導入を検討している。海南島を有力候補とみる専門家は多い。

習近平(シー・ジンピン)指導部が海南島に寄せる期待は大きいが、課題も多い。一つは人材不足だ。20年6月、当時の海南省トップだった劉賜貴氏は「人材の基礎が薄く弱いことが発展のボトルネックになっている」と認めた。

国内なのに免税店がある海南島は中国人旅行客をひき付ける。中国人の「買い物都市」としては香港の役割を一部代替しているともいえる。ただ国境をまたいだ資金取引など金融環境では、香港に大きく見劣りする。

ウイグル族への人権問題などをめぐり、米欧は対中制裁を打ち出してきた。中国も対抗措置として反外国制裁法などの法整備を進めてきた。中国と米欧の対立がさらに激化した際に、海南島への進出企業が米国の制裁対象となるリスクも拭えない。

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