韓国の与党代表に尹錫悦大統領派 総選挙向け党掌握

【ソウル=甲原潤之介】韓国の与党「国民の力」は8日の党大会で、国会議員の金起炫(キム・ギヒョン)氏を代表に選んだ。代表選の開票の結果、投票総数の過半数を獲得した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の支持を前面に掲げた金氏が圧勝し、2024年の総選挙(一院制の国会議員選)に向けて尹氏が党内を掌握する構図が強まった。
尹氏は8日、ソウル近郊の京畿道高陽市で開いた党大会に出席した。新代表の選出に先立ち「わが党は自由民主主義と憲法の価値を守る政党だ」と述べた。「新しく選出される指導部と私たちはひとつになる」と強調した。
新代表に選出された金氏は「一つになって総選挙の圧勝をなし遂げよう。尹政権を成功させ、総選挙で圧勝させる責任と義務がある」と呼びかけた。党大会後の記者会見では「韓米日の強力な安全保障がカギになる」と述べ、尹政権の路線と足並みをそろえた。
代表選には金氏のほか、22年の大統領選で尹氏への候補一本化に応じた安哲秀(アン・チョルス)氏、青年政治家のチョン・ハラム氏、朴槿恵(パク・クネ)政権で首相を務めた黄教安(ファン・ギョアン)氏が出馬した。
4人の候補のうち金氏が総投票数の52.93%を獲得し、2位の安氏(23.37%)に大差をつけた。
金氏は尹氏に近い勢力の支持を集め、尹政権を支える姿勢を明確にした。党代表は24年総選挙の候補者の公認権を持つ。金氏が1回目の投票で過半数を獲得し、2位との決選投票に持ち込ませない圧勝を実現したことで、尹氏を支える勢力が党内で発言力を強め、強固な基盤を築く見通しになった。
今回の党内での選挙前、国民の力の代表は不在だった。前代表の李俊錫(イ・ジュンソク)氏は30代の若いリーダーとして注目を集め、大統領選で若年層の支持集めに一役買った。だが、大統領選後には尹氏に近い勢力との間に溝が生じ、過去のスキャンダルをめぐる証拠を隠蔽した疑いで懲戒処分を受け、代表を追われた。
李氏を支持する若年層はチョン氏を推したが、得票率は14.98%で、伸び悩んだ。
国会では最大野党「共に民主党」が過半数を握る。国民の力は少数与党で、国会審議が必要な法律の制定や予算の編成では野党との妥協が必要になる。尹氏が27年までの大統領の任期中に自らの政策を推進するには、24年総選挙で国民の力が過半数を得る必要がある。
尹政権は野党への攻勢も強める。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は複数の事件で検察の捜査を受けている。韓国政府が2月、国会に提出した李在明氏の逮捕同意案は国会で否決されたが、逮捕に同意する造反者が、共に民主党の中に一定数いた事実が明らかになり、同党に衝撃を与えている。
与野党がそれぞれ党内の結束を固められるかどうかが、24年総選挙の勝敗を左右しそうだ。