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韓国、水素推進へ15社連合 現代自動車やSKが4兆円投資

生産・供給インフラ輸出

(更新)
加盟社トップが発足式に集まった(8日、ソウル市近郊)

韓国企業が連携して水素エネルギーの活用促進に乗り出す。現代自動車とSK、ポスコなど15社が参加する委員会が8日発足した。総額4兆円を投じて水素の生産や充塡といった供給網を構築する。世界で脱炭素が加速するなか、インフラ輸出につなげる狙いだ。ただ日欧でも関連産業の育成が進んでおり、競争力を確保するには早期の技術確立が欠かせない。

ソウル市近郊の展示会場で8日開幕した「水素モビリティーショー」。2020年に続き2度目となる今回の最大の目玉が「コリアH2ビジネスサミット(韓国版水素委員会)」だ。

現代自とSK、ポスコ、ロッテ、現代重工業グループ、斗山、暁星(ヒョソン)、ハンファグループ、GS、コーロンの大手・中堅10社が結束。直前に建設事業を手掛けるサムスン物産など5社も加わり15社となった。財閥も含むこれほど多くの有力企業が特定の事業分野で連携するのは珍しい。

発足式には財閥トップが顔をそろえた。現代自の鄭義宣(チョン・ウィソン)会長は「個社の企業競争力をまとめ、水素産業の生態系の競争力を高める」と強調。SKの崔泰源(チェ・テウォン)会長は「大規模投資を推進するためファンドを組成し、資金需要の大きいインフラ投資や海外事業を推し進める」と話した。

委員会は経営トップが集まる協議体として活動し、水素を普及させるための課題の整理や政府への政策提言を担う。参加各社は30年までに合計43兆4000億ウォン(約4兆1200億円)を供給網整備などに投じる。水素の最終的な利用方法は燃料電池車(FCV)から発電まで多岐にわたる。

事業効率化図る

自動車から化学、重工業など多様な製造業を抱える韓国財閥が協力する意義は大きい。経営トップが合意して財閥を横断する形で複数のプロジェクトが動き出せば、事業スピードを速められるためだ。

水素プラントの設計から貯蔵タンクや運搬車の製造などで関係企業が連携すれば、インフラを効率的に整備できる。水素充塡所を運営する各社が運搬車を共同運行するといった動きも出てきそうだ。加盟社でコンソーシアム(事業共同体)を構成してインフラ輸出する計画もある。

加盟各社は既に水素を次代の収益源とみて動き出している。

筆頭格は現代自だ。トヨタ自動車と並ぶFCV世界大手で、ロボットや発電向けの燃料電池システムも開発する。売電事業も始めており、燃料電池の出荷量を増やして量産効果で原価低減を狙う。8月には1300億円を投じて韓国内2カ所に燃料電池の工場を新設すると発表した。

SKも生産から充塡所運営まで一気通貫での供給網整備に取り組む。石油精製や給油所運営といった石油事業が主力のSKは脱炭素を掲げて事業転換を急ぐ。21年1月には水素エネルギーの新興企業、米プラグパワーに1500億円を出資して水素ビジネスのノウハウ蓄積を急いでいる。

ポスコは水素貯蔵に使う鋼材の開発のほか、水素生産などにも進出。ロッテケミカルも既存の化学プラントを生かした水素生産を狙う。斗山重工業と現代重工業は水素生成プラント設計などを手掛ける。

一部の事業で競合する大手が結束するのは、この分野をいち早く海外でも通用する産業に育成するためだ。水素インフラを整えようとする動きは中東など世界各地で広がる。水素関連市場の規模は50年に270兆円に達するとの試算もある。韓国国内でインフラ整備の技術やノウハウを蓄積できれば、国外の需要を取り込める。

韓国の産業構成をみると自動車や造船、鉄鋼、石油化学といった強みだった領域では中国勢の追い上げも激しく、かつての収益力を保てなくなっている。既存事業への危機感が新産業開拓での結束につながった。

日欧も企業連合

もっとも脱炭素の切り札となる水素産業の育成を巡っては、韓国以外の国・地域も動いている。

日本ではトヨタ自動車や岩谷産業などが水素の需要創出やコスト削減を目指し「水素バリューチェーン推進協議会」を20年12月に立ち上げた。21年8月時点で約250社・団体が参加し、政策提言など具体的な活動を開始した。

欧州でも20年7月に「欧州クリーン水素アライアンス」が発足した。企業と自治体が参加し、製造時に二酸化炭素(CO2)を排出しないグリーン水素の普及を促す。

国際的な枠組みでは、17年にトヨタや独ダイムラー、現代自など自動車会社とエネルギー大手が主導する「水素協議会」ができ、研究成果の共有や規格の標準化に取り組んでいる。

他国に比べやや出遅れた韓国の企業連合が早期に成果を上げるためには、海外企業との連携も欠かせない。韓国では天然ガスなどを改質してつくるグレー水素が主流という課題もある。

韓国の水素産業が世界的な存在感を発揮できるか。持ち前の事業スピードに加え、標準規格選定での国際協調や安全性の確保、再生可能エネルギーの活用技術が課題となりそうだ。

(ソウル=細川幸太郎、東京=杉垣裕子)

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