ネットフリックスに回線使用料請求 韓国SKが提訴

【ソウル=細川幸太郎】動画配信サービスの視聴者増を受けて、韓国通信大手のSKブロードバンド(SKB)が回線使用料の支払いを求めて米ネットフリックスを提訴した。通信会社が回線使用を巡ってコンテンツ配信会社を訴えるのは異例。国会では支払い義務を課す法整備の動きもあり、韓国でプラットフォーム企業への風当たりが強まっている。
インターネット接続事業者(ISP)のSKBが9月30日に回線使用料の対価を求める訴訟を提起した。SKBは「インターネット網は構築費用や維持管理に相当な投資が必要。ネットフリックスは対価の支払いなしに回線を利用している」と批判する。
SKB回線でのネットフリックスの通信量は9月に毎秒1200ギガビットと、会員数の増加とともに3年あまりで24倍に急増したという。SKBは通信量の増加に対応するためにネットフリックス専用回線を用意するなど消費者の不満解消のために回線整備に投資してきたと主張する。
SKBはネットフリックスに対して交渉の場を求めてきたが応じられず、韓国政府に仲裁を求めた経緯がある。ネットフリックスは「支払い義務はない」としてソウル中央地方裁判所に提訴し、6月に地裁は「対価支払いは妥当」としてネットフリックスの主張を退けた。
ネットフリックスは控訴する方針で、対抗策としてSKB側は支払いを求めて反訴した。業界関係者によると、請求金額は約700億ウォン(約65億円)~1000億ウォン規模になるという。
韓国内でネットフリックスは、動画共有サイト「ユーチューブ」運営の米グーグルに次ぐ大容量データを扱う事業者だ。ネイバーやカカオなど国内ネット大手は各通信会社と交渉して回線使用料を支払っているという。そのため海外勢の「回線タダ乗り」に批判が集まっていた。
国会では5日の放送通信委員会で、複数の国会議員が「ネットフリックスは韓国発のコンテンツにも支えられ、企業価値を高めている。韓国内でも責任を果たすべきだ」などと批判した。法整備の必要性も議論されており、海外企業に対しても回線使用料の支払いを求める声が出ている。
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