中国ゼロコロナ緩和、操業停止や封鎖の乱用禁止

【上海=渡辺伸】中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は7日、新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策について、新たな緩和策を発表した。地方都市が独自の判断で工場を操業停止したり、地域を封鎖したりすることを禁じる。国民の不満に対応し、行き過ぎた規制に歯止めをかける。
中国共産党の習総書記(国家主席)は10月に3期目の指導部を立ち上げたばかりだが、市民らが白い紙を掲げてゼロコロナに反対する抗議活動が全国に拡大した。放置すれば政権の足元が揺らぎかねない状況だった。緩和策を段階的に打ち出し、国民の不満のガス抜きをして、停滞する経済にも配慮する姿勢を示した。
国家衛生当局の幹部、李斌氏は7日の記者会見で「絶え間なく予防・管理措置を改善していく」と述べさらなる緩和策も示唆した。
中国ではコロナ感染者は強制的に施設で隔離されていたが、今後は無症状や軽症者の自宅での隔離も認める。濃厚接触者の隔離期間も8日間から5日間に短縮する。感染者発生時に、地域全体や団地ごと「高リスク地域」とすることを禁止する。封鎖対象を建物や住戸などに限定する。
高リスク地域以外では、人の移動制限、工場や企業の操業停止といった過剰対応を禁止する。国内外の企業はこれまでロックダウン(都市封鎖)によって操業停止の事例が相次いでいたが、稼働状況が改善しそうだ。
公共施設や商業施設に入る際のPCR検査の陰性証明などの提示を不要とする。国内で地域をまたいで移動する際に求めてきた陰性証明の提示も不要とし、目的地到着時のPCR検査もやめる。
流行地域での全住民を対象としたPCR検査の実施を取りやめるほか、検査の対象範囲を絞り込み、回数も減らす。全員検査の取りやめなどは11月11日に発表した緩和策「20条措置」にすでに盛り込んでいたが、今回、改めて強調した形だ。
外国から中国大陸を訪問する場合、施設などで合計8日間の隔離が義務付けられている。今回は緩和に踏み込んでいない。衛生当局幹部の梁万年氏は「中国は人口が多く、高齢者も多い。人口あたりの医師や病床が足りない。対応能力を高めるには時間がかかる」と説明した。ただちにゼロコロナを解除するのは難しいとの考えを示した。
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