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サムスン、部門CEO刷新 「製品」「デバイス」2部門に

対中国勢、事業創出急ぐ

【ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子は7日、主要3部門を率いる3人の最高経営責任者(CEO)を全員交代したと発表した。CEOの交代は4年ぶり。今後はスマートフォンと家電の部門を「製品」として一体運営し、「デバイス」と並ぶ2部門体制として新任CEOの2人に強い権限を持たせて意思決定スピードを速める。人事と組織の大幅な刷新で新事業創出を急ぎ、中国勢の追い上げを振り切る。

人事と組織改編は7日付で発令した。サムスン売上高の6割に相当するスマホと家電を統括する製品部門CEOには、テレビ事業を担当していた韓宗熙(ハン・ジョンヒ、59)氏を充てる。半導体とディスプレーのデバイス部門CEOには半導体メモリー事業を率いてきた慶桂顕(キョン・ゲヒョン、58)氏が就く。

デバイス部門CEOだった金奇南(キム・ギナム、63)氏はサムスン電子総合技術院の会長に就いた。スマホ部門の高東真(コ・ドンジン、60)氏と家電部門の金炫奭(キム・ヒョンソク、60)氏は顧問となった。

サムスンは創業者の孫にあたる李在鎔(イ・ジェヨン、53)副会長が経営トップとして、各部門CEOに権限を委譲してきた。自らが2017年と21年に前大統領らへの贈賄罪で拘束された際にも、部門CEOが主導する形で経営を担っており、役割は極めて大きい。

李氏は今年11月の米国出張の際に「我々の経営環境は劇的に変わりつつある。後続企業を引き離すだけではこの転換期を乗り切ることはできない」と話し、今回の人事や組織の刷新案を練ったとされる。

強烈な危機感の背景にあるのはサムスンの主力事業のスマホ、家電、ディスプレーなどにおける中国企業の猛追だ。同社幹部は「製品性能は中国勢も十分に優れており、スペックだけでは勝てない」と認める。競争に巻き込まれにくい事業や製品の創出が不可欠となっているのだ。

今回の組織改編の最大の要点は、消費者向けの製品であるスマホと家電部門の運営の一体化だ。この2部門を1人のCEOが所管する体制にし、CEOを従来の3人から2人にスリム化する。

その狙いは「製品・サービス間の相乗効果を生み出す」(サムスン)ことにある。サムスンはスマホやテレビなど世界トップシェアの製品群を抱えるものの、コモディティー(汎用品)化が進み、製品の特長が打ち出しにくくなっている。

家電部門トップだった金炫奭氏は、すべての家電製品に人工知能(AI)を搭載して健康管理などの新サービス開発に乗り出すと表明していた。運営の一体化でこうした変革を加速できる。

経営陣の刷新に先駆けて、一般社員の人事制度の改編も11月末に発表した。年次等級の考え方を廃止し、成果を上げれば30代でも役員に昇進できる制度に改めた。「能力と専門性を重視する水平組織文化を定着させる」(サムスン)狙いだ。

一般的に韓国企業の多くは出世競争が激しく、上司の指示に従う人材が出世する傾向にある。過去の成功体験を持つ上司の方針に従う社員ばかりでは革新的な製品やサービスが生まれないとの欠点もあった。実際に20代社員がサムスンに見切りをつけて起業する例も多く、「出る杭(くい)を伸ばす」人事制度に改めて若手の求心力を高める。

自力での成長と同時に、M&A(合併・買収)による新事業獲得も進める。

7日発表の幹部人事のなかで、グループ全体の司令塔役を担う「事業支援タスクフォース」トップの鄭賢豪(チョン・ヒョンホ、61)氏の肩書が社長から副会長に昇格した。サムスン電子の序列では李健熙(イ・ゴンヒ)元会長の死後、会長職は空席となっており、李在鎔氏の副会長が最高位だ。鄭氏を同列の副会長に引き上げて強い権限を持たせたことになる。

サムスンの経営に詳しいSK証券の金栄雨(キム・ヨンウ)リサーチセンター長は鄭氏の昇格を「新事業開拓やM&Aを急ぐ狙いがある」とみる。21年1月にはサムスン幹部が「今後3年間でM&Aを推進していく」と発言しており、9月末時点の現金120兆ウォン(約11兆5000億円)の使い道を模索する。

かつて日本の電機産業との競争を勝ち抜き、ハードウエア中心に売上高23兆円の巨大企業となったサムスン。ただ既存市場を奪う成長モデルは中国勢の台頭によって限界を迎え始めている。革新を導き新たな市場を切り開けるか。サムスンは人事刷新と組織改編で積年の課題に挑もうとしている。

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