香港活動家・黄氏を国安法で逮捕 53人はいったん保釈へ
【香港=木原雄士】香港警察は7日、服役中の民主活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏を香港国家安全維持法の政権転覆罪の容疑で逮捕した。6日に一斉逮捕した53人の大半は香港外に出られないように旅券を取り上げて保釈する見通しだ。今後も捜査を続け、起訴するか判断する。

黄氏は昨年12月に違法集会扇動罪などで禁錮刑の実刑判決を受け服役中だ。警察は6日に黄氏の自宅を捜索していた。香港メディアによると、別の活動家で収監中の譚得志氏も国家安全法違反容疑で再逮捕した。ともに立法会(議会)選挙に向けた20年の予備選に参加しており、民主派で議会の過半数を狙う戦略が問題視されたとみられる。
黄氏は別の複数の容疑で起訴され裁判が進行中だ。有罪判決が相次げば服役が長引き、民主化運動にかかわるのが難しくなる可能性もある。
逮捕後に保釈されたのは米国人弁護士のジョン・クランシー氏や、前立法会議員の区諾軒氏ら。クランシー氏は中国の人権問題に関心が深く、予備選に関わった団体の会計担当だったという。国家安全法による外国人の逮捕は初めてとみられる。
ポンペオ米国務長官は6日に声明を出し「米国市民が逮捕されがくぜんとしている。米市民の恣意的な拘束や嫌がらせを許さない」と反発した。
区氏は予備選を企画した中心人物の一人だったが、中国から国家安全法に抵触すると警告され、予備選直後に活動から撤退すると表明した。その後、東大公共政策大学院の博士課程で学んでいた。日本から香港に戻り、新型コロナウイルス対策の隔離中に逮捕された。
クランシー氏と区氏は政権転覆を画策、組織した疑いが持たれている6人に含まれ、有罪になれば重い刑罰が科される可能性もある。大量逮捕から一夜明けた7日、香港紙・明報は1面に逮捕された53人全員の顔写真を掲載した。社説では「開放的な社会には反対派の存在も必要だ」と主張した。