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五輪不参加の北朝鮮、コロナ禍で国威発揚の余裕なく

(更新)
五輪不参加を伝えた「朝鮮体育」のウェブサイト=共同

【ソウル=恩地洋介】北朝鮮が新型コロナウイルスを理由に東京五輪への不参加を明らかにした。社会主義国の北朝鮮は、五輪を国威発揚や外交に利用してきた。金正恩(キム・ジョンウン)総書記はスポーツ振興への思い入れを見せてきたが、深刻化するコロナ禍で苦しい判断を迫られたとみられる。

北朝鮮体育省が運営するウェブサイト「朝鮮体育」が6日までに、北朝鮮オリンピック委員会の決定を伝える文章を掲載した。「新型コロナウイルスによる世界的な保健危機から選手たちを保護するため、委員の提案により第32回オリンピック競技大会への不参加を討議決定した」と記されている。

北朝鮮メディアによると、北朝鮮オリンピック委員会は3月25日にテレビ会議方式で総会を開催。金日国(キム・イルグク)体育相は「国家経済発展5カ年計画(25年まで)の期間、国際大会でメダル獲得数を持続的に増やし、社会主義建設を推し進める」と述べた。

それから二週間もたたないタイミングでの五輪不参加の発表からは、コロナ禍が改善していない状況がうかがえる。

2018年2月、平昌冬季五輪開会式に出席した北朝鮮の金与正氏㊨=聯合・共同

医療や保健体制が脆弱な北朝鮮は新型コロナの流入を防ぐため、金正恩氏の命令の下、防疫を徹底している。20年1月から中国との境界を完全封鎖し、他国からの物資受け入れまでも厳しく制限している。

医薬品や食料品など輸入物資が不足し、平壌駐在の外交官が次々と北朝鮮を脱出する状況も明らかになっており、五輪代表団を海外に派遣する余裕は乏しいとみられる。

経済事情が苦しい中でも、北朝鮮は国威発揚の観点から五輪への参加やメダル獲得を重視してきた。前回の2016年リオデジャネイロ五輪には、9種目30人あまりの選手団が参加。重量挙げと体操で金メダルを2つ獲得している。

もっとも、北朝鮮には五輪を政治と絡めてきた過去がある。1964年の東京五輪では「朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)」の国号を認めなかった国際オリンピック委員会(IOC)に反発し、開会の直前にボイコットした。

88年のソウル五輪は韓国の単独開催に反発し参加しなかった。前年には五輪を妨害する目的で大韓航空機爆破事件を起こしている。

韓国の北朝鮮専門家は今回の不参加決定にも政治的な意図があるとみている。北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は「五輪参加は実益がないと判断し、日本への政治的な反感も作用した」と指摘する。日本政府は6日に北朝鮮への独自制裁を2年間延長すると閣議決定した。

バイデン米政権が対北朝鮮政策のとりまとめを進めるなか、北朝鮮は3月下旬に短距離ミサイルの発射を再開した。韓国の国家情報院で分析官を務めた郭吉燮(クァク・キルソプ)国民大教授は「米国に核保有国と認めさせるため、背水の陣を敷いている」と見る。

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