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日韓の正常化前進 韓国が徴用工解決策、日本おわび継承

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【ソウル=甲原潤之介】韓国政府は6日、元徴用工問題について韓国の財団が原告への賠償を肩代わりする解決策を発表した。日本側は関係改善につながると評価し、1998年の日韓共同宣言など過去の政権が表明した「反省とおわび」の立場を継承すると改めて確認した。日韓基本条約の締結後、最悪といわれる日韓関係が正常化に向け前進する。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は「未来志向の韓日関係に進むための決断だ」と述べた。韓悳洙(ハン・ドクス)首相との会議での発言を大統領府が紹介した。

解決策の対象は元徴用工らが新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で、2018年に賠償金支払いの判決が確定していた。韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が賠償金相当の金額を原告に支払うのが解決策の柱だ。

財源は韓国企業の自発的な寄付などで調達する。原告は日本の被告企業からの直接賠償を求めて日本企業の資産を現金化する司法手続きを進めてきたが、今回の解決策は日本企業の拠出を前提としない。

原告の一部は反発しており、財団の給付を受け取らない可能性もある。韓国外務省幹部はその場合でも裁判所への供託によって賠償の履行が可能との見解を示した。同省は原告の説得を続け、日本側の負担なしで問題を処理する方針だ。

日本政府は賠償問題は1965年の日韓請求権協定によって解決済みで、判決は国際法違反と主張してきた。被告の日本企業による拠出がないことが日本側の受け入れ条件だった。

2022年に発足した尹政権が問題解決に取り組んだ。ロシアによるウクライナ侵攻で安全保障環境が急変したことも日韓両国の背中を押した。

岸田文雄首相は6日の参院予算委員会で解決策に関し「日韓関係を健全な関係に戻すものと評価する」と語った。中国や北朝鮮を念頭に「日韓、日米韓の戦略的連携を一層強化していく」とも説明した。バイデン米大統領は「日米韓の結びつきを強めていく」と歓迎する声明を出した。

日本は韓国側が求めてきた「誠意ある呼応」に一定の配慮を示した。

首相は記者団に「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」と言明した。1998年に当時の小渕恵三首相が「痛切な反省と心からのおわび」を表明した日韓共同宣言を含むとも話した一方で、具体的な文言を改めて読み上げるのは避けた。

賠償金を肩代わりする財団への日本企業の自発的な寄付には林芳正外相が「政府は特段の立場を取らない」と容認する姿勢を示した。日本製鉄と三菱重工は財団への寄付について「予定はない」とコメントした。

元徴用工の解決策に進捗があれば日韓関係の改善が進む。経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)は経済分野などで共同事業を検討する。

首相は韓国が政権交代などで再び立場を変える可能性を記者団から聞かれると「仮定に基づいた質問には答えない」と述べるにとどめた。

BSテレ東「日経ニュース プラス9」でこのニュースを解説


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