香港「国歌」取り違え相次ぐ 政府、Google表示に抗議

【香港=木原雄士】スポーツの国際大会で香港の国歌を取り違えて演奏する事例が相次いでいる。11月に韓国で開かれたラグビーの大会や2日にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイであったパワーリフティングの大会で中国国歌ではなく、大規模デモの応援歌「香港に栄光あれ」が流れた。香港政府はインターネット検索に問題があるとして、米グーグルに抗議した。
中国の一部である香港の国歌は中国国歌「義勇軍行進曲」だ。香港は独自の旗を持ち、スポーツ大会に中国とは別の選手団を派遣するケースが多いものの、試合前や表彰式の国歌斉唱では中国国歌が流れる。
香港メディアによると、過去のラグビーの大会で正しい中国国歌が流れたものの、テレビ中継の画面に誤って「香港に栄光あれ」と表示されたケースも複数見つかった。韓国の大会主催者は担当者がネット検索で見付けた「栄光あれ」を香港の国歌と勘違いして使用したと釈明したもようだ。
「栄光あれ」は2019年の大規模デモの際に匿名の音楽家がネット上で発表し、荘厳なメロディーや若者らを勇気づける歌詞が人気を呼んだ。ただ、歌詞にデモのスローガン「光復香港 時代革命(香港を取り戻せ 時代の革命だ)」が入っており、香港政府は「暴力的な抗議活動や香港独立にかかわる歌」として、学校での演奏を禁じた。

グーグルで「香港国歌」や「香港の国歌」を検索すると「栄光あれ」が上位に表示される。 香港政府は正しい検索結果を表示するようグーグルに申し入れた。専門家の間では「検索結果を変えるのは難しく、広告を出すしかない」との声も出ている。
親中派はグーグルへの批判を強めている。中国政府系の香港紙・大公報は警察の国家安全部門に捜査を促す論評記事を掲載した。グーグルの対応は香港国家安全維持法(国安法)に違反するとして、政府は訴訟を検討すべきだという声もある。
香港の国歌を巡っては、サッカーの国際試合などで観客がブーイングを浴びせる行為がたびたび問題になってきた。今回、国歌を取り違えた韓国にSNS(交流サイト)で感謝を表明した男性も逮捕された。香港オリンピック委員会は香港の選手が国歌の誤りに気づいた際には演奏中止を求めるなどの指針をつくった。
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