/

中国、米国債保有1割減 租税回避地に移管も

(更新)
think!多様な観点からニュースを考える

【北京=川手伊織】中国が保有資産を入れ替えている。7月の米国債保有額は2021年末から9%減り、8月の金輸入額は過去最大だった。米欧日によるロシア中央銀行の海外資産凍結に衝撃をうけ、ドル依存への警戒を強めている。ただ急速な運用先の多様化も難しい。タックスヘイブン(租税回避地)などで米国債の一部を「隠れ保有」している可能性もある。

米財務省によると、中国の米国債保有額は7月末時点で9700億ドル(約139兆円)だった。前月をわずかに上回ったが、6月までは7カ月連続で前月比で減った。米中貿易戦争が始まった18年から減少傾向だが、22年上期だけで1割近い1000億ドルを減らした。

半期でみると16年7~12月以来5年半ぶりの圧縮額だ。対照的に、代表的な租税回避地のケイマン諸島保有の米国債は同期間に385億ドル増加した。バミューダ諸島も同70億ドル増えた。

中国が削減した一部を移管し「隠れ保有」を増やした可能性もある。米国の制裁を受けて米国債の売却によるドル資金の調達が難しくなっても「隠れ保有」なら制裁の目をかいくぐりやすいとみられるためだ。

直接的な保有額の削減をめぐり、中国の金融当局関係者は「米金利上昇に伴う損失を避けるためだ」と語る。ただ市場動向に照らした運用のほか、ロシア中銀の海外資産凍結も契機になったとみられる。中国政府関係者は対ロ制裁が固まった3月、「国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除よりはるかに打撃が大きい」と驚いた。

習近平(シー・ジンピン)指導部は台湾の武力統一も辞さない構えだ。台湾有事で米欧日が金融制裁に動けば、3兆ドルを超す外貨準備の多くが凍結され、経済への打撃は計り知れない。

中国の外貨準備は16年時点で59%がドル資産だった。ドル資産の代表といえる米国債を減らすのは、貿易決済などで以前ほどドルに依存しなくなったこともある。

ロシアは中国との貿易を中心に人民元決済を拡大している。ロシア国営ガスプロムは6日、中国への天然ガス輸出における決済通貨を従来のドルなどからルーブルと人民元に切り替えると表明。ロシア最大手銀ズベルバンクは人民元建て融資を始めた。

SWIFTが調べた中国大陸以外での人民元の決済比率をみると、ロシアは7月時点で香港と英国に次ぐ第3位に浮上した。中国にとってドルを介さずにロシアから化石燃料を調達できる利点は大きい。

ドル資産からの代替候補の一つが金だ。中国税関総署によると、8月の金輸入額は103億5800万ドルと前年同月の2.3倍だった。中国の統計で遡れる17年以降で最大だ。どんな通貨とも交換できる金は「無国籍通貨」といえ、換金しやすい利点もある。ロシアやトルコなど米国と距離を置く国も米国債を減らし、金保有を増やした。

中国の準備資産に含む金保有量は19年9月末から今年8月末まで約1950トンで変わらない。金は装飾品のほか工業や医療の需要もあるが、景気停滞で減退気味だ。国有銀行などが保有しつづけ、外貨準備以外の形で「安全資産」を増やしている可能性がある。

中国財政省と中国人民銀行(中銀)は4月、国内外の銀行幹部を集めて会議を開いた。外貨準備のドル依存を見直し、円建てやユーロ建てへの分散投資を拡充する可能性を探るためだ。関係者によると、銀行幹部の反応は「性急な運用先の多様化は現実的ではない」などと否定的だった。金融制裁に対抗する王道である人民元の国際化も道半ばだ。代替資産への多様化は容易ではない。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • この投稿は現在非表示に設定されています

    (更新)
    (0/300)
(0/300)
投稿内容をご確認ください
投稿チェック項目誤字脱字がないかご確認ください
投稿チェック項目トラブル防止のため、記事で紹介している企業や人物と個人的つながりや利害関係がある場合はその旨をお書き添えください
投稿チェック項目URLを投稿文中に入力する場合は、URLの末尾にスペースか改行を入れてください
詳細は日経のコメントガイドラインをご参照ください

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン