中国恒大、巨大スタジアム建設から撤退 権利を返上

【広州=比奈田悠佑】経営再建中の中国不動産大手、中国恒大集団は4日、巨大サッカースタジアムの建設プロジェクトから撤退すると発表した。当初計画では収容人数10万人超と、世界最大規模のサッカー専用スタジアムになる見通しだった。恒大は土地の使用権を当局に返上して得る55億元(約1100億円)を、スタジアム関連の債務返済に充てる。
南部の広東省広州市で2020年に着工したスタジアム建設から手を引く。恒大はこれまでに建設した構造物の価値を加味し、付帯する不動産物件の売却収入を差し引いたうえで、当局に土地使用権を売却する。工事代金の未払いなどがあり、売却で得た金は関連する債務問題の解決に充てるという。
今後は第三者が建設プロジェクトを引き継ぐとみられる。中国メディアによると、広州の政府系インフラ投資会社などが候補に挙がっている。
当局による不動産業界への締め付け強化をきっかけに、恒大は拡大戦略が行き詰まり、資金難に陥っている。経営再建に向けて債務の整理が急務となっており、開発プロジェクトの売却などで資金を捻出している。
ただ、7月末に暫定案をまとめるとしていた外貨建て債務の再編計画の公表は先送りした。債権者との調整や資産売却が思うように進んでいないとみられる。グループ内の不適切な資金流用に関わったとして幹部が辞任するなど、企業統治のずさんさも浮き彫りとなっており、経営の立て直しは不透明さを増している。