中国、21年成長目標「6%以上」 全人代が開幕
【北京=川手伊織】中国の第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の第4回会議が5日午前、北京の人民大会堂で開幕した。李克強(リー・クォーチャン)首相は所信表明にあたる政府活動報告で、2021年の実質経済成長率目標を「6%以上」と設定した。選挙制度の全面的見直しを議論する香港問題では「外部勢力の干渉に断固反対する」と強調した。
11日に閉幕する。会期は例年10日前後だったが、新型コロナウイルスを意識して20年に続き、1週間に短縮する。

李氏は政府活動報告で「経済回復の基盤はいまだ固まっていない」と述べ、雇用回復の遅れや個人消費の伸び悩みを課題に挙げた。
21年の成長率は、6%以上という数値目標を掲げた。国際機関や中国内外のシンクタンクは8%前後との予測が多い。世界経済の不確実性が高いなか、6%以上という設定は「最低ライン」を強調する意味合いがある。

消費を左右する雇用を巡り、20年は5.6%だった失業率を5.5%前後にするとした。都市部の新規雇用は1100万人以上とした。
中国は新型コロナを早期に抑え込み、20年10~12月の経済成長率はウイルスが広がる前の水準に戻った。政府は危機対応で拡張した財政・金融政策の正常化も慎重に探る。
21年のGDPに対する財政赤字の比率は3.2%とする。過去最高の3.6%以上とした20年より下げる。20年に新型コロナ対応で発行した財政赤字に算入されない「特別国債」は発行しない。
金融政策は「合理的かつ適度なものにする」と述べた。人民元相場の安定や零細企業の資金繰り難解決に注力する。
全人代で審議する2021年予算案には国防費を前年比6.8%増の1兆3553億元(約22兆6000億円)を予算として計上した。新型コロナウイルスの影響がなおくすぶる中で、軍拡路線を堅持する習近平(シー・ジンピン)指導部の姿勢が浮き彫りになった。
21~25年の第14次5カ年計画では、李氏は「双循環(2つの循環)」という成長モデルを構築すると語った。海外からの投資も利用しつつ、国内の需要と供給両面を強化し、成長を実現する考えだ。海外の制裁やサプライチェーンからの中国外しに影響されない体制を築く。
政府活動報告とは別に公表した5カ年計画は今後5年間の成長について「合理的な範囲を保つ」とし具体的な数値目標を明記しなかった。35年までの長期目標では「中等先進国並みにする」とした。
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