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LGスマホ、規模競争脱落 中国勢追い上げで苦境

ブランド築けず ソニーは質追求

LG電子は1月に画面サイズを広げられる新型スマホを公開したばかりだった

韓国LG電子は5日、スマートフォン事業から撤退すると発表した。中国ブランドの躍進でシェアを奪われ、同部門は6期連続の赤字を記録。家電やテレビとの相乗効果を模索して事業を続けてきたものの、販売量が収益に直結する「規模の競争」からふるい落とされた。かつて日本の電機大手を追い込んだ韓国勢が、今度は同じ苦境に立たされている。

LG電子は1995年に携帯電話事業を開始。スマホは韓国のほか、北米や中南米などで販売している。2020年の出荷台数は約2500万台とピーク時の半分以下に縮小。20年12月期までの6年間の累積赤字は5兆ウォン(約5000億円)に膨らんだ。

21年5月末でスマホ生産を中止し、7月末には販売も終了して同事業から撤退する。「プレミアム市場では2強体制(米アップルと韓国サムスン電子)が固まり、競合との価格競争が激しくなる中で成果を出せなかった」。LG電子が5日に発表した撤退理由が、同社の置かれた苦しみを如実に物語る。

最大の敗因は2強のようにブランドを築けなかったことだ。世界のスマホ市場は上位5社の合計シェアが15年の54%から20年には71%となり、上位寡占が進む。サムスンとアップルに次ぐ3~6位は巨大な自国市場を持つ中国勢が占め、下位ブランドが浮上するのは困難になりつつある。

アップルとサムスンは「iPhone」「ギャラクシー」という強いブランドをそれぞれ持つ。10万円前後の高価格帯のスマホを拡販して収益を確保。これを消費者をひき付ける新型端末の開発費に充てるという好循環を築き、中国勢の追い上げをかわしている。

一方のLG電子はブランド力が弱く、中価格帯での競争を強いられた。ピーク時の世界出荷は3~4位まで浮上したが、15年ごろから小米(シャオミ)やOPPO(オッポ)ら中国勢との競争が激化し、シェアを食われていった。スマホの技術革新の伸びしろが狭まるなか、汎用品(コモディティー)化の波にのみ込まれた形だ。

LG電子もディスプレーを2枚使った2画面スマホを発売したり、巻物型のディスプレーで画面を伸縮させるスマホ試作品を発表したりして、高性能シフトを模索した。ただ多くの消費者を魅了するようなヒット商品を生み出せなかった。

LGはサムスンのような新機軸のスマホを発売できなかった(2画面をつなげたLG㊨と、ディスプレーが曲がるサムスン㊧)

追い込まれたLG電子はスマホ事業の売却も検討した。ベトナムの複合企業ビン・グループや米グーグルなどが買い手として浮上したものの、最終的には「通信事業の資産とノウハウを、他事業の競争力強化と未来事業に活用する」として売却を断念した。

LG電子が足元で競争力の強化を急ぐのが電気自動車(EV)化で電子部品の需要が高まる車載部門だ。カナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルとEV用駆動部品で合弁会社を設立しており、スマホ部門で培った通信やディスプレー技術を活用する。「巣ごもり消費」で業績好調の家電やテレビでも、遠隔操作などでスマホの技術が生きるとしている。

スマホ撤退を受けて同部門の従業員約3700人をこれら他部門に再配置する考えだ。ただ注力するEVや家電、テレビの分野でも中国メーカーの攻勢は激しく、ここでもコモディティー化の影が忍び寄る。LG電子は高付加価値の家電などを開発して中国勢を振り切ろうとしているものの、先行きは不透明だ。

ソニーは「量を追わない」戦略に転換(「エクスペリア」の5G対応スマホ)

LG電子と同様にスマホ事業の赤字に長く苦しんだソニーグループは「万人受け」を捨て、一部のクリエイター向けの10万円を超える商品など高価格帯に注力。欧州と日本、アジアの一部に販売エリアを限定するなど販促コストを絞り込み、21年3月期は黒字化を見込む。「エクスペリア」ブランドが確立された小規模な市場で勝負し、「シェアを追わなくても利益が出る体質に改善した」(ソニー)。

ただ中価格帯のスマホ中心だったLG電子にとって、ソニーのような「量を追わない」生き残り策は難しく、売却か撤退かの選択肢しか残されていなかったとの指摘もある。幅広い消費財の分野で中国発のコモディティー化が進む今、消費者向け製品が事業の7割超を占めるLG電子が製品・ブランド力を問われる局面は今後も続きそうだ。

(ソウル=細川幸太郎、東京=伴正春)

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