シンガポール、ワクチン3回目接種開始へ 高齢者ら対象

【シンガポール=中野貴司】シンガポールは9月中に、新型コロナウイルスワクチンの3回目の追加接種(ブースター接種)を始める。まず60歳以上の高齢者や介護施設の入居者らを対象とする。
シンガポールは全人口の8割がワクチンの2回接種を終えているものの、ワクチンの効力が時間の経過とともに低下するとのデータも出てきている。重症化しやすい高齢者らに優先的に追加の接種をして、重症患者や死亡者の増加を防ぐ。
60歳以上の高齢者や介護施設の入居者は2回目のワクチン接種後、6~9カ月後に3回目の接種が可能になる。シンガポールでは3月ごろに、60歳以上の最初の2回接種完了者が出ており、3月に2回目を終えた高齢者は月内にも3回目の接種を受けることになる。がん患者など十分な免疫力のない人も医師が必要と判断すれば、追加の接種を受ける。
先進国の中でもワクチン接種率が高く、重症者数や死亡者数を低く抑えてきたシンガポールが3回目の接種に踏み切ることで、3回目の接種を検討する国が今後増える可能性がある。2回接種した住民の割合が6割を超すイスラエルも既に3回目の接種を開始している。シンガポール政府は接種率が全人口の9割を超えない限り、集団免疫は達成できないとの見解を示している。
シンガポールでは行動制限を一段と緩和した8月中旬以降、新型コロナの新規感染者数が増加傾向にあり、3日の市中感染者数は216人に達した。ただ、社会・経済活動の再開に伴う新規感染者数の増加は「想定外の事態ではない」(ローレンス・ウォン財務相)として、重症者が増え医療体制が逼迫しない限り、規制の再強化はしない方針だ。