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抵抗貫き「反文政権」の象徴に 韓国野党の尹錫悦氏

韓国の保守系野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長は、8カ月前まで政界を捜査する側にいた。「自分が正しいと思えば絶対に妥協しない」という信条の検事で、政治に翻弄されながら検察のトップまで上り詰めた。検察改革で文在寅(ムン・ジェイン)政権への抵抗を貫いた姿勢が、低迷する野党の支持層に救世主と映った。

尹氏が一躍注目されたのは2019年秋のことだった。文大統領の側近、曺国(チョ・グク)元法相との対立劇だ。文氏は肝煎りの検察改革を、娘の不正入試疑惑が浮上していた曺氏に委ねた。 検察は捜査を進め、曺氏は辞任に追い込まれた。

次の法相の秋美愛(チュ・ミエ)氏とも激しい闘争を繰り広げる。秋氏は尹氏の側近を一斉に左遷し、個別事件への指揮権を発動。自身に従おうとしない尹氏の職務停止と懲戒を請求し、対立は法廷に持ち込まれた。

文政権は検察に代わる捜査機関「高位公職者犯罪捜査処」を新設し改革の成果を誇ったが、政権に不満を持つ野党支持層は尹氏に次期大統領候補としての期待を寄せた。投票が1年後に迫るのに、有力な候補が他にいなかったからだ。

尹氏が司法試験に合格したのは32歳の時だった。任官した際、すでに部長級検事になっていたソウル大法学部の同級生もいたという。被疑者の弱点を論理的に攻める取り調べ能力にたけ、主に政界捜査を担う部署に身を置いた。

妥協を嫌うキャラクターは、政治との摩擦を引き起こすことにもなる。

朴槿恵(パク・クネ)政権下の13年、情報機関の国家情報院が大統領選で野党候補に不利な情報をネットに書き込んでいた疑惑が浮上した。特別捜査班長に就いた尹氏は、国家情報院の家宅捜索や国家情報院長の取り調べに踏み切ったが、途中で地方に左遷される憂き目に遭う。

後に国会の国政監査に呼ばれた尹氏は、政権側から捜査への圧力があったと暴露した。国会議員の質問に「私は違法な指示には従わない。人に忠誠は尽くさない」と答えた。地方の地検や高検を転々とする時期がしばらく続いた。

16年秋、民間人の友人を国政に関与させていた朴大統領が弾劾訴追され、尹氏は朴氏を巡る疑惑捜査の班長として呼び戻される。その後、財閥から巨額の賄賂を受け取った罪などで朴氏に懲役30年を求刑するに至った。「朴政権と戦った検事」の存在は文大統領の目にとまり、検察総長への抜てきにつながる。

もっとも検察一筋だった人物に大統領のポストを任せるのが適切かという議論は野党支持者の間でもある。陣営には保守系の有力な元官僚や学識経験者が顔をそろえるが、予備選では政策面での準備不足を浮き彫りにした。

外交安全保障の公約は、南北融和を最優先に考えた文政権との対比が明確だ。強力な米韓同盟の再建を掲げ、日米豪印のQuad(クアッド)への参加も検討するとしている。本人は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持も明言した。

経済政策は規制改革や雇用制度の見直しを唱えるが、詳細な公約を出しておらず方向性はよく見えていない。予備選の討論会では福祉政策や財源問題を巡り後手に回る場面もあった。

関係者によると、尹氏は子どもの頃、学者だった父の留学に帯同し、日本に短期間滞在したことがある。日本の歴史にも造詣が深いという。(ソウル=恩地洋介)

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