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「被害者中心」の原則譲らず 韓国・文大統領が演説

日本には「対話の準備」

1日、ソウル市内で演説する韓国の文在寅大統領=聯合・共同

【ソウル=恩地洋介】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1日の演説で、日韓の歴史問題に言及した。元慰安婦らの訴訟は「被害者中心」の原則を維持する一方、日本との関係改善にも期待を見せた。日本側が求める解決への具体策には踏み込まないが、内政などへの悪影響を考慮し一段の関係悪化は回避に努める方針だとみられる。

3月1日は日本統治下の1919年に起きた抗日独立運動「三・一運動」の記念日で、韓国大統領が演説で日韓関係に言及するのが恒例だ。文氏は昨年の演説では日本に新型コロナウイルスへの共闘を呼びかけ、具体的な懸案には触れなかった。

今年はさらに悪化した日韓関係への対応を示さざるを得なかった。文氏は日本企業の資産現金化が迫る元徴用工訴訟や、日本政府への賠償命令が確定した元慰安婦訴訟を念頭に「被害者中心主義の立場で、賢明な解決策を模索する」と強調した。

「被害者中心主義」は文氏がかねて唱えてきた歴史問題への対処方針だ。「被害者たちの名誉と尊厳を回復するためにも最善を尽くす」と訴えた。

日本に対しては「互いにとても重要な隣国だ。韓国の成長は日本の発展を支え、日本の成長は韓国の発展を支えた。これからもそうだろう」と融和姿勢を見せた。日本政府に向けては、具体策には言及しないまま「いつでも向き合い、対話する準備ができている」と呼びかけた。

文氏は1月の記者会見で、慰安婦問題の最終解決をうたった2015年の日韓合意を政府間の公式合意だと認め、原告を説得する考えを示していた。ただ、日本と原告側の主張が相反するなか文政権の動きは鈍く、解決能力の限界が早くも露呈している。

元慰安婦を支援する市民団体は、日韓合意を尊重するとした文氏の発言を「卑屈といえるほどの守勢的な対応だ」と批判した。元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏は「日本の罪を明らかにしてほしい」として、慰安婦問題を国際司法裁判所(ICJ)に付託するよう文政権に求めている。

文氏は演説で「過去の問題は過去の問題として解決していく一方、未来志向的な発展に力を注がなければならない」とも語った。文政権内には、解決の難しい歴史問題と協力可能な分野を切り離す「ツートラック外交」という発想が存在する。

ただ、請求権問題の最終解決を約束した1965年の日韓請求権協定に反する司法判決が相次ぎ、すでに懸案の棚上げは現実味を帯びない状況に追い込まれている。

「東京五輪は韓日、南北、日朝、米朝の対話の機会になり得る」。文氏は、東京五輪への協力を唱えたくだりで本音を明らかにした。この先の政権運営を考えると、日本との協調は避けて通れない。

残り1年2カ月の任期内に北朝鮮との関係を改善したい文氏は、東京五輪を事実上最後の契機だと捉えている。さらに、同盟国間の協調を重視するバイデン米政権との関係を損なえば、22年3月の次期大統領選に向けて保守勢力に攻撃材料を与えることにもなる。

夏以降は、大統領選に向けた国内の政治対立が激しくなる。保革の対立が強まれば日本に融和姿勢を見せる余地は乏しくなるため、日本政府内には文政権が歴史問題への解決策を示すことに懐疑的な見方が強い。

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