中国政府、化学2社の統合認可 売上高17兆円に

【北京=多部田俊輔】中国政府は31日、国有化学大手の中国中化集団(シノケム)と中国化工集団(ケムチャイナ)の経営統合を認可したと発表した。2社を合計した年間売上高は1兆元(約17兆円)を超える。米中対立が続くなか、2位を大きく引き離す世界最大の総合化学メーカーを誕生させて国際競争力の向上を目指す。
中国の国有企業を統括する国務院国有資産監督管理委員会(国資委)が2社の統合を認可した。国資委が全額出資する新会社を設立し、シノケムとケムチャイナはそれぞれ傘下に入り、存続する仕組みとしている。
シノケムは化学やエネルギー、金融などを手掛ける複合企業だ。中国メディアによると、2019年12月期の売上高は5863億元で、純利益は133億元。ケムチャイナはイタリアのタイヤ大手ピレリやスイスの農薬大手シンジェンタなどを買収し、19年12月期の売上高は4543億元で、純利益は27億元だった。
米国の国防総省は20年8月、米国内で直接的・間接的に活動している中国人民解放軍の関連企業として中国企業11社を追加認定したと発表し、この中にシノケムとケムチャイナは含まれていた。米中の溝が深まるなかで、中国政府は2社の競争力強化には統合が必要と判断した。
中国政府はシノケムとケムチャイナの統合に向けた準備を着々と進めてきた。16年にシノケムの経営トップである董事長に就任した寧高寧氏は、18年にケムチャイナの董事長も兼任。2社は20年6月に農業部門を統合し、同年9月には寧氏が「合併計画を進めている」と明らかにした。
習近平(シー・ジンピン)指導部は国有企業を重視する姿勢を強めている。李克強(リー・クォーチャン)首相は3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告で「(国有企業を中心とする)公有制経済を揺るぎなく発展させて(民営企業を中心とする)非公有制経済の発展を導く」と強調した。
国資委の郝鵬主任(閣僚級)は2月の記者会見で「国有企業は中国共産党が政権を握る国で重要な支柱だ」としたうえで、25年までの5カ年計画で「競争力強化のために重点業界の再編統合を進める」と話していた。