旭化成名誉フェロー 吉野彰(7)入社
野武士の気風 旭化成へ 魅力的に思えた企業研究者
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京都大学の修士課程2年になると、そろそろ進路を考えなければならない。子どものころから化学に憧れ、大学で光化学反応を研究していると、研究者として生涯、探求の道を歩みたいという思いがますます強まっていた。
研究は順調だった。修士論文のテーマに選んだのは「電荷移動錯体の光化学反応」。電子を出しやすい化合物と受け取りやすい化合物が結合して「錯体」という分子をつくる。そこに紫外線や可視光を照射したときの反...

スマートフォンやパソコンなど私たちの身の回りの様々な機器を動かしているリチウムイオン2次電池。これを開発し2019年のノーベル化学賞に輝いたのが旭化成名誉フェローの吉野彰さんです。手がけた研究テーマがなかなか実らない苦しい時期に運命的に出合った「電気を通す樹脂」。そこから電池開発に乗り出すも、次から次へと難題が持ち上がり――。諦めない精神と柔軟な発想で道を切り開いてきた、希代の企業研究者の物語です。