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新型コロナ 高齢男性はなぜ重症化しやすいのか

日経サイエンス

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新型コロナウイルス感染症の急激な感染拡大が続いている。厚生労働省の発表によれば国内の重症者数は1月18日にはじめて1000人を上回った。新型コロナには重症化しやすい人としにくい人がいて、高齢者や持病を持つ人はリスクが高いことが知られている。ただ、この2つに加えて、あまり注目されていないリスク要因がある。男性であることだ。

重症化リスクに男女差があることは、様々な国のデータからみてとれる。中国のCDC(疾病対策センター)が2020年2月に実施した感染者約4万5000人の調査では、感染者数に占める死亡者の割合は男性で2.8%、女性では1.7%だった。米国のCDCの発表では、1月上旬までに亡くなった約31万人のうち54%が男性だった。日本の統計でも、年代別に見た致死率はほぼ全ての年代で男性の方が高い。

英国ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジなどの研究チームは昨年の12月、世界約50カ国で発表された約90報の報告をもとに、重症化や死亡のリスクが男女でどのように違うかをまとめた。男性は女性に比べ、重症化して集中治療室に入るリスクが約3倍高く、死亡する確率も約1.4倍高かった。男性の方がウイルスに感染する機会が多いかというと、そうではない。感染者は男女でほぼ同じだった。男女の死者数の差は社会的な環境の違いではなく、新型コロナに対する体の応答の違いによって生じているようだ。

実は、新型コロナに限らず多くの感染症で男性の方が死亡リスクが高いことがわかっている。02〜03年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した香港では、年齢調整後の死亡リスクは男性が女性の1.62倍だった。C型肝炎ウイルスやエイズを引き起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)でも、男性の方が検出されるウイルス量が多い。

こうした差が生じる最大の理由は免疫の違いにあると考えられている。一言で言えば、女性の方が免疫応答が活発なのだ。女性の性染色体であるX染色体上に、免疫に関わる遺伝子が多く存在していることが関係している。

免疫応答には、どの病原体にも同じ攻撃を繰り出す「自然免疫」と、病原体ごとに特徴を記憶して異なる攻撃をする「獲得免疫」の2種類がある。高齢になると男女ともに獲得免疫が弱まって自然免疫が優勢になる傾向があるが、男性は女性よりもこの傾向が顕著であることが近年の研究でわかってきた。

米エール大学の高橋岳浩研究員と岩崎明子教授らは、新型コロナの患者の免疫応答が性別によってどのように異なるかを分析した。男女それぞれ50人から採血して免疫細胞の種類と数、免疫細胞がやり取りする情報伝達物質(サイトカイン)の量などを調べたところ、男性では獲得免疫を担うキラーT細胞と呼ぶ免疫細胞の活性が落ちるほど重症化しやすいことがわかった。これまでの研究と考え合わせると、男性では年齢とともに獲得免疫が低下し、重症化リスクが上昇しているようだ。

重症化のメカニズム解明は、さらなる治療法の向上につながる心強い成果だ。ただ、急激な感染拡大が医療機関の対応能力を上回れば、行うべき治療法がわかっていても施せない事態に陥ってしまう。より多くの重症患者が質の高い医療を受けられるかどうかは、感染者を減らす私たちの行動変容にかかっている。

(詳細は1月25日発売の日経サイエンス3月号に掲載)

  • 発行 : 日経サイエンス
  • 価格 : 1,466円(税込み)

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