温暖化の「重大な影響」増す 環境省報告書、収穫減など
環境省は17日、地球温暖化が国内の社会や経済、環境などに及ぼす影響を評価した報告書を公表した。21世紀末にコメの収穫減などが起こり、水害などで製造業などにも影響が出ると予測。評価した71項目の7割で「重大な影響」が出ると警告した。気候変動による悪影響を減らすための適応計画の改定に役立てる。
報告書は5年に一度、最新の文献をもとに農林水産、災害、健康、産業、生活などの分野で、項目ごとに重大性、緊急性などを分析している。前回の2・5倍の1200件以上の論文を集め、精度が上がった。この結果、影響が重大と評価した項目の割合は前回の65%から今回は69%に、すぐに対策が必要な「緊急度が高い」とした項目の割合も45%から54%に上がった。

コメの収穫量は2061~80年ごろまでは増えるが、その後減少傾向に転じると予測した。既に各地で起きているコメが白くなる病気の割合が増え、品質も低下し、経済的にも影響が生じる。果樹でも今世紀末ごろにウンシュウミカンやリンゴの産地の適地が北上し、現在の産地での栽培が難しくなるリスクがあるという。
水産業では今世紀末頃に水温上昇などで、マグロやブリ、サケなどの分布域などが変化し、漁獲量が減ると予想した。また、ワカサギ、ホタテガイ、カキなどの養殖ができなくなる地域が出てくる恐れがあると指摘。
畜産業では、暑さでウシやブタ、ニワトリが十分に成長しない、乳量が減る、肉質が低下するといった現象が起こる可能性があるという。
自然災害にも影響が出て、台風の勢力増大や洪水などによる水害リスクが高まる。
産業・経済分野への影響も大きい。大麦の供給量減少によるビール生産への影響や、金融・保険業界では保険金の支払額増加による収益悪化、観光・レジャー産業では雪不足でスキー場が閉鎖されるなど、雪山や砂浜などの自然資源を活用したレジャー産業が成り立たなくなる可能性がある。建設業界は強風対策などで設計基準の見直しを迫られる可能性もある。
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では21世紀末までに世界の平均気温の上昇を産業革命前よりセ氏2度の上昇に抑えるとの目標を掲げる。報告書は、海面上昇による海岸浸食では、目標を達成しても2100 年までに日本沿岸で平均62%の砂浜が消失し、未達成で4度上昇する場合は平均 83%の砂浜が消失するとの予測もあると記している。