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IPO、年末にかけ14年ぶり高水準に 個人投資家の戦略は

個人投資家に人気が高い新規株式公開(IPO)が相次いでいる。2021年は9月までに80社が上場した(東京プロマーケットからの上場含む)。新型コロナウイルス感染拡大に伴うデジタル化の進展を背景に、情報通信関連企業の資金調達が目立っている。昨年3月のコロナショックを受けた公開時期の延期や上場環境の改善も追い風になっているといい、「今後も勢いは続く」(いちよし証券の宇田川克己投資情報部課長)との見方が多い。年末にかけてのIPO市場の動向と個人投資家の投資戦略を探った。

12月だけで30社以上? 年末は「IPOラッシュ」

9月末までに東京証券取引所から上場承認を受け、10月7日以降に新規上場を予定しているのは、医療機器メーカーのPHCホールディングスなど5社。IPOは例年12月に件数が膨らむ傾向があり、市場関係者からは、今年は12月だけで30社を超える上場が見込まれるとの声も聞かれる。「年間では100社を上回り、07年(121社)以来14年ぶりの高水準となる可能性が高い」とフィスコの小林大純チーフアナリストはみる。

業種別で目立つのは「情報・通信業」だ。コロナ禍で一段と加速したデジタル化の恩恵を受けて「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を手掛ける企業の上場が目立っている」(三木証券の原口裕之商品部投資情報グループ課長代理)。

高水準の要因はそれだけではない。一つは、20年3月の株価急落で上場を中止した企業の株式公開があったこと。抗体を用いたがん治療薬などの開発を手掛けるペルセウスプロテオミクスや、再生医療を目的とした臍帯血(さいたいけつ)の保管ビジネスを手掛けるステムセル研究所は、1年超の延期を経て今年6月に上場した。

2つ目の要因は、上場環境の改善だ。公募・売り出し価格(公開価格)は類似した既上場の同業数社のPER(株価収益率)を基準に算定されることが多い。「足元で高いPERを付けている銘柄は多く、公開価格が高く設定されやすいことから、上場時に売り出しを予定する企業にとっては環境が良い」(東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリスト)

新興市場の低迷で上場後の上値重く

もっとも、新興市場の地合いは悪化している。新規上場が多い東証マザーズ市場では、マザーズ指数が9月末時点で昨年末比6%安となるなど、日経平均株価(同7%高)と対照的に下落が目立つ。松井証券によると、顧客が保有するマザーズ銘柄の信用評価損益率は同日時点でマイナス19%に沈む。

IPOには個人投資家の応募が多い。投資家は保有株に含み損があれば、IPO銘柄を購入する余力が減るため、相場の軟調さがIPO市場に与える影響は大きい。過去1年以内に上場した銘柄の値動きを指数にした「QUICK IPOインデックス(加重平均)」は昨年末比3%安にとどまっている(9月末時点)。上場件数が増え、資金が分散されていることもIPOの上値が重い一因だ。

東証が発表する投資部門別売買状況によると、マザーズ市場で今年売り越しが目立つのは「その他法人」だ。直近の上場企業はベンチャーキャピタル(VC)が株主に含まれるケースが多い。「初値が高く付いても、VCの売り出しにより、その後断続的に下落する銘柄が散見される」と仙石氏。今年上場した銘柄のうち、9月末時点でおよそ7割以上が初値を下回った。

年後半のセカンダリー投資戦略は

上場して間もない株を売買する「セカンダリー投資」ではどんな戦略が有効か。投資サイト運営も手掛ける兼業投資家の竹内弘樹さんは、低迷が続く銘柄について「VCや短期筋が売り切った半年後から1年後が買い場」と見ている。「企業の潜在能力が高いにもかかわらず、売り出しが多かったり、上場時の地合いが悪かったりして初値が伸び悩んだ銘柄」も有望だという。

株式投資で1億円を超える資産を築いた会社員投資家の弐億貯男さん(ハンドルネーム)は、「割高水準のIT(情報通信)やAI(人工知能)関連を除き、PERが20倍以下で、直近の業績進捗が良好な銘柄を選別したい」と話す。

年末にかけては、DX関連のほか、月面探査や後払い決済サービスの関連など幅広い業種の企業が上場するとの観測がある。上場企業数が高水準となることが見込まれるだけに、例年以上に銘柄選びが重要になりそうだ。

(井沢ひとみ)

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