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4月から18歳以上で株売買が可能に 取引上の注意点は?

民法改正で成年年齢を2歳引き下げ 投機にはまるリスクも

4月1日に改正民法が施行され、成年年齢が従来の20歳から18歳に引き下げられた。これに伴って、18歳になったら親の同意がなくても自身の判断で証券口座を開設し、株式などの金融商品を取引できるようになった。投資家の裾野が広がり、貯蓄から投資へのシフトが促進されるといった期待が高まるが、良いことばかりではない。証券会社が新成人向けに提供する金融商品やサービスの中には、知識や経験の不足している人がうかつに手を出すと、大きな損失や不利益を被るものが含まれているからだ。実情と取引で注意すべきポイントを探った。

「4月から投資を始めたい」。この春、東京都内の大学に進学した小林麻耶さん(18)はこう意気込む。4月1日に施行された改正民法で成年年齢が従来の20歳から18歳に引き下げられ、親の同意がなくても証券会社で口座を開設できるようになったからだ。

この点に注目しているのは、新たに成人に仲間入りした18~19歳の若者だけではない。証券会社も強い関心を寄せている。新型コロナウイルスの感染拡大で2020年の2~3月に世界の株式相場が暴落した後、相場が反騰する中で20~30代の証券口座開設が急増。この新たなトレンドに乗じて、インターネット証券大手をはじめ各社は20~30代に対象者を絞ったキャンペーンなどを展開し、若い世代の顧客獲得に力を入れてきたからだ。

成年年齢の引き下げを受けて、ネット証券大手は18~19歳を対象にした顧客獲得策を新たに打ち出す。SBI証券は、18~20歳に限定してポイントを付与するキャンペーンを企画。楽天証券は、楽天ポイントを使った投資や楽天カードクレジットによる決済など、楽天グループの他のサービスを投資で活用できるプログラムを18歳から利用できるようにする。

証券会社の商品やサービスのラインアップに注意

18歳から自分の意志だけで証券口座を開設して株や投資信託などの金融商品を売買できるようになることについて、ファイナンシャルプランナー(FP)の植田奈々世さんは次のように話す。「金融リテラシーを磨く機会を得る年齢が早まる点は評価できる。一方で、親権者の同意が不要になることで、新成人が親の目の届かないところで金融商品を売買できるようになる。その結果、ギャンブルに近い取引に手を出す人も出てきそうだ」

実際、証券会社が新成人に提供する金融商品やサービスの中には、知識や経験の乏しい人が手掛けると大きな損失を被る可能性があるものも含まれている。例えば楽天証券は、証券会社から資金を借りて自己資金を上回る金額を売買できる信用取引を、18~19歳も利用できるようにする。

マネックス証券は、価格のボラティリティー(変動率)の大きさが問題視されることの多い暗号資産(仮想通貨)の差金決済取引(CFD)の年齢制限を、従来の20歳以上から18歳以上に引き下げる。松井証券は、就職していて一定の定期収入があるといった条件付きで、信用取引や証拠金を差し入れればその何倍もの金額を取引できる先物、オプション、外国為替証拠金(FX)取引の売買を18歳から手掛けられるようにする方針だ。

FPの安藤宏和さんは「小さい頃からインターネットに親しみ、ITリテラシーが高い新成人がネットゲーム感覚で売買を行い、リスクの大きいFXやオプションなどで短期に大きな利益を上げようとする可能性がある」と危惧する。

米国ではそうした懸念が既に現実のものとなっている。ネットやSNS(交流サイト)の書き込みに触発された若者たちが、一獲千金を求めて個別企業の株のオプション取引を実行。取引に習熟していない大学生が、巨額の損失を被ったと勘違いして自殺する。そんなショッキングな事件が起きて注目された。

投資や金融商品に関する知識を身につける

金融商品の売買でリスクの高い取引に手を出して大損するような事態を防ぐために、新成人や新成人の親はどのような対策を講じたらいいのだろうか。基本となるのは、金融リテラシーを向上させることだ。金融商品やその取引についての知識を増やし、判断力を磨くことが求められる。それが新成人にとっては自衛につながる。親自身も金融リテラシーを向上させて初めて、子供に対して個々の商品や取引のメリット、デメリットを説明して注意を喚起できるようになる。

公教育の場では金融教育の実践が始まったばかり。学習指導要領が改訂され、この4月から高校の家庭科の授業に「資産形成」の内容が盛り込まれて必修となった。当面は投資についての本を読んだり、株式市況を解説するニュース番組を見たりして、独学で知識を増やす地道な努力が求められる。上に、投資初心者向けの参考書として評価の高い書籍や読書のノウハウを紹介した過去記事のリストを掲載した。興味の湧いた方はぜひ一読して参照にしていただきたい。

(井沢ひとみ)

高校の家庭科で「資産形成」が必修化 生徒の反応は?


22年度から高校の家庭科の授業に「資産形成」の内容が盛り込まれ、金融教育の普及を促進するきっかけになることが期待されている。新たな授業を教員や高校生たちはどう受け止めているのだろうか。

株式学習などを公民科の授業でいち早く取り入れてきた東京都立西高校(東京・杉並)の篠田健一郎指導教諭は「高校で金融経済に触れておくことは、『お金周り』のことを考える時のハードルを下げたり、多くの大学生が投資などになじみが薄い中で、新しいものを考え出す思考をつくったりする」と話す。家庭科の授業で資産形成が盛り込まれたことで「理論的によりよき社会を形成するしくみや制度などを扱う公民科とは全く異なったアプローチで、多面的多角的に金融経済を学べるようになる」と期待する。

リクルートが全国の高校1~2年生を対象に実施した調査によると、「投資に関する授業が楽しみ」と回答した割合は65%に上った。投資の印象については、「難しそう」(60%)、「始まる前に勉強が必要」(40%)、「ギャンブルっぽい」(32%)が上位を占めた。

授業に期待する声が多い半面、投資を自分とは縁遠く、ハードルが高いものだと受け止めている生徒が多いことが分かる。授業を通して投資についてのハードルを下げ、人生に欠かせないものとの認識を広められるかどうか。それが必修化の成否を分ける鍵の一つになりそうだ。
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