/

安値水準のマザーズ指数 2つに分かれる個人の戦略

東京株式市場で東証マザーズ銘柄が下落基調を強めている。1月27日には、指数が2020年4月以来およそ1年9カ月ぶりの安値を付けた。米連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和縮小)加速を決め、1月26日には3月の利上げ開始を示唆した。金利先高観が強いことから、割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のマザーズ銘柄に売りが出ている。ウクライナ情勢を巡る警戒感も重荷となっている。

売り越す海外勢、買い越す個人

「昨年からファンドの解約が多く、今はただ指をくわえて様子見するしかない」。マザーズ銘柄を中心としたグロース(成長)株ファンドを20年以上運用するファンドマネジャーは肩を落とす。東京証券取引所の投資部門別売買状況によると、海外投資家はマザーズ市場で1月第3週(17~21日)までに7週連続で売り越した。

「21年12月期決算を控え、年末にかけて持ち高整理を進めていた海外のヘッジファンドやミューチュアルファンド(投資信託)が、年明け以降も再び売りに回っている」(GCIアセット・マネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャー)。委託取引に占める海外勢の売買比率は同週時点で個人の売買比率と拮抗しており、海外勢の存在感は同市場内で高まりつつある。

21年終盤以降、FRBの金融政策は急展開した。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において、FRBは11月中のテーパリング開始を決定。22年1月26日のFOMC後の声明では、3月会合での利上げ開始が示唆され、パウエル議長は記者会見で金融引き締めに前向きな姿勢を見せた。

高PER銘柄は、長期金利が上昇すると将来のキャッシュフローの現在価値が目減りするため投資妙味が薄れやすくなる。そのため市場では、割高感のある成長株が売られ、割安株に資金が向かう「逆回転」が起こりやすくなっている。

一方、個人投資家は足元で買い越しを続けている。「保有株全体の追い証を促す投げ売りはまだ起きていない」(東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリスト)とされ、個人の待機資金の受け皿であるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)は1年前から大きく変わらず、投資余力も残る。

下落局面の投資行動は2パターン

とはいえ松井証券によると、顧客が信用取引で買ったマザーズ銘柄の信用評価損益率は1月27日時点でマイナス38.7%と、個人が抱える含み損は大きい。追い証が発生する目安とされるマイナス20%を大きく下回り、20年3月のコロナショック後の水準まで悪化しているのだ。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストによると、顧客の投資行動は2つに大別されるという。

1つは、ナンピン買いだ。同じ銘柄を追加購入することで平均取得価格を下げるこの手法は個人の買い越し要因の1つとみられるが、株安が今後も続けば損失は薄まらない。「PERが数百倍の銘柄の多くは、たとえ株価が10分の1になりPERが下がっても、成長期待が説明できないくらい既に株価が先行して上昇しているため、なかなか買い手がつきにくい」(窪田氏)

もう1つはバリュー(割安)株や大型株への資金シフトだ。SBI証券、楽天証券、マネックス証券店内の売買代金上位を見ると、マザーズ銘柄は上位にほぼ顔を出さない。1月時点で上位にランクインするのは、レーザーテック東京エレクトロンに代表される半導体銘柄や海運大手など。「マザーズ銘柄以上に大型株へと資金が向かっている」(マネックス証券の福島理広報室長)

後者の戦略をとる専業投資家の著名ブロガー、DAIBOUCHOUさん(ハンドルネーム)は、およそ半年前から中小型株の売却を進めているという。電気自動車(EV)戦略の発表を機に成長が期待できるとみたトヨタ自動車のほか、金利上昇の恩恵を受ける三井住友フィナンシャルグループなどの銀行株や、総合商社をはじめとする資源関連株など大型株へのシフトを始めた。「配当が高くてPBR(株価純資産倍率)が低い銘柄が多く、マザーズ銘柄より期待値が高い」とDAIBOUCHOUさんはみる。

銘柄選別がより重要に

マザーズ銘柄を選ぶ場合に、確認したいのが成長性だ。割安成長株に集中投資し、19年に運用資産が目標の2億円に到達した個人投資家の弐億貯男さん(ハンドルネーム)は、「現状は需給悪化によって成長性の高い銘柄を安く買えるチャンス」と捉えている。「保有株の売却よりも、安くなったマザーズ銘柄を仕込む局面」とみて、割高で手が出せなかったIT関連銘柄に投資したいとする。

弐億貯男さんが足元の下落局面で購入したのは、システム開発を手掛けるSharing Innovationsやメール配信システムを手掛けるユミルリンクなど。サイバーセキュリティーに関する教育事業を手掛けるグローバルセキュリティエキスパートは、「数年前よりターゲットを大企業から中小企業に切り替えたことや、教育事業のオンラインへの転換が奏功し、急速に事業が成長している」と期待を寄せる。

DAIBOUCHOUさんは、現在も保有株の半分を中小型株で固めるものの、「高成長に期待して先行して買われるハイパーグロース株で夢を追うのではなく、地道に利益を積み上げ、東証1部に昇格できる収益力を持つ銘柄を保有するのがいい」とアドバイスする。1月中旬時点では、終末期患者向けに介護住宅を運営する日本ホスピスホールディングスや住宅販売のアールプランナーなどに投資していたが、その後売却した。

マザーズ相場は、当面神経質な状況が続くとみられるだけに、銘柄選別がより重要視される局面に差し掛かっているといえそうだ。

(井沢ひとみ)

日経マネー 2022年3月号 持ちっぱなしで資産が増える 高配当株&優待株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/1/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン