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米マイナス実質金利解消も、債券市場が発する警報

米10年債利回りの上昇に歯止めがかからない。25日に1.5%の分水嶺をあっさり超えた。本欄の「米金利急騰、許容範囲超す臨界点は?」で1.5%と明示したのが2月17日。想定をはるかに上回るスピードだ。

この臨界点を超えると、コロナ後の経済回復を映す良い金利高から、一転、経済過熱を懸念する悪い金利高に変異する可能性が強まる。その先には、テーパリング(緩和縮小)、さらに、米国債増発による財政リスクが待ち受ける。

プロの視点では、市場の実勢をより強く反映する「残存期間10年以上」の米国債について見ると、平均実質利回りがマイナス圏からプラス圏をうかがう水準にまで急騰していることが注目される。

これまでの株を含めたリスク資産価格上昇を支えた最大要因が、マイナス実質金利であった。債券保有では資産価値が目減りする状況ゆえ、マネーはリスク選好度を高めてきた。しかし、今や、その前提が崩れかけている。

この現象は、名目金利が急騰するなかで、インフレ期待が後退する傾向を映す。米金利急騰が加速したこの1週間を見ても、10年債名目利回りが1.3%から1.5%台まで上昇するなか、インフレ期待を表すBEIは2.24%から2.17%に下落した。

そのなかで、「残存期間10年以上」の米国債の実質平均利回りがマイナス0.27%からマイナス0.08%に上昇しているのだ。グラフで見ても明らかなようにプラス圏突入も視野に入る。

実体経済から遊離した株価上昇と言われてきたが、インフレ期待が盛り上がらず、株価にも実体経済への収れん傾向が出始めた兆しとも読める。

この影響は、株のみならず、「金」にも及ぶ。金利を生まない金が昨年史上最高値を更新した最大の要因が、実質金利マイナス幅の拡大であった。その金価格も昨晩は1トロイオンス1800ドル台から1760ドル台まで急落。株も、ヘッジ役の金も同時安。資産運用受難の様相である。

とはいえ、金利上昇の速度はスピード違反気味だ。債券市場が今や短期投機筋の格好の標的となっている。その結果、連日、急騰・急落を繰り返すなかで、金利水準が切り上がっている。投機マネーが金利上昇を「誇大表示」している面も否定できない。

ここは経過観察による冷静な見極めが必要であろう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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