スゴ腕投資家が伝授 安定高配当株を探す4つの着眼点 - 日本経済新聞
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スゴ腕投資家が伝授 安定高配当株を探す4つの着眼点

押さえておきたい高配当株・優待株のポイント(下)

ウェブサイト「やさしい株のはじめ方」などを運営する兼業投資家の竹内弘樹さんが、株初心者向けに株主優待と配当株投資の基本を上下の2回にわたって解説。今回は、安定高配当株の選び方と注意点を探っていく。優良な高配当株を探すためのコツや「高すぎる配当利回り」の思わぬ落とし穴を見ていこう。

株主優待と配当株投資の基本を押さえたまゆさん。配当株投資に興味を持ったため、さっそく投資対象の選び方や注意点を竹内弘樹さん(ひっきーさん)から教わることにしました。

まゆさん(以下敬称略) ひっきーさん、高配当を狙った投資を始めたいのですが、銘柄はどう選んだらよいでしょう?

ひっきーさん(以下敬称略) そうですね。高配当株投資の探し方には4つのポイントがあるので、それぞれ順に見ていくことにしましょう。

4つのポイントとは

ひっきー 1つ目は、「業績が安定していること」です。配当の原資になっているのは純利益なので、業績のチェックが欠かせません。決算書の一つ、損益計算書を見ると分かりやすいでしょう。

損益計算書は、一定期間における企業の経営成績を表すもの。売上高からスタートし、稼ぐためにかかった費用を差し引いて、最終的に純利益が残ります。会社は株主のものなので、会社に残った純利益は株主の取り分となります。

まゆ 純利益がしっかり出ていないと、配当を出すのは厳しいということでしょうか?

ひっきー その通りです。業績が不安定で純利益が安定しない場合、毎年配当金を出せるとは限りません。配当金が減ると、それに失望した投資家が株を売却することはよくあります。そのため、高配当株を買う場合は、「配当金を継続して出せるか=業績が安定しているか」を確認すべきです。

まゆ なるほど。では2つ目のポイントは何でしょうか?

ひっきー 2つ目は「配当金の変動が少ないこと」です。こちらも、配当金を継続して出せる会社を選ぶために必要な条件です。具体的には、過去の配当金の推移を見て、金額に大きな変化がないか、過去に配当金を減額していないかどうかを調べます。大きな変化がなければ、今後も安定して配当金を出すことが可能だと予想できるでしょう。

一時的な増配には注意

ひっきー 記念配当(会社の創立や創業などを記念し増配される配当)や特別配当(企業の業績が極めて好調だった決算期に、通常の配当以外にプラスされる配当)で、一時的に配当金が多いことがあるので、配当利回りをチェックする際には気を付けてください。記念配当や特別配当があるかどうかは、『会社四季報』の配当欄で確認できます。記念配当がある場合は「記」、特別配当がある場合は「特」と書かれています。

まゆ 過去に配当金が減額されていなければ、今後もそのまま配当金を出してくれそうですね。この条件に当てはまる銘柄なら安心して投資できそうです。

ひっきー 気を付けたいのは、ここでチェックしているのは「過去」の配当金の推移だということ。あくまで過去の情報なので、急に業績が悪化して配当金が減額、もしくは最悪ゼロになるケースもあります。将来は誰にも分からないので、あくまでこれまでの傾向として捉えておきましょう。

利回り3%台の銘柄を狙う

まゆ 3つ目のポイントは何でしょうか?

ひっきー 3つ目は、「配当利回りが3〜4%程度であること」です。理由は、配当利回りがこの水準であれば配当金を継続して出せる可能性が高いと見られるからです。3〜4%という数字は東証プライム上場企業の平均配当利回り(2%台前半)と比較して高く、高配当株の仲間と言えるでしょう。

まゆ 毎年配当がそれだけもらえるのは確かに魅力的ですね。配当利回りはどのように求めることができますか?

ひっきー 配当利回りは「1株当たりの配当金」÷「株価」×100で求めることができますよ。配当金がいくら高くても、株価も高ければ当然、配当利回りは低下します。投資対象を選ぶ際は、配当金ではなく配当利回りを注意して見るようにしてくださいね。

また配当利回りが上がる要因は、「配当金が増える」か「株価が下がる」のどちらかしかありません。配当金と株価の過去の推移を調べて、どちらのパターンか特定するようにしましょう。もし株価が下がっている場合は、優良な株ではない可能性が高いので、注意が必要です。なぜなら株価は将来を織り込んで動くものなので、「株価が下がっている=将来業績が悪くなるのを織り込んでいる」と考えられるからです。

まゆ なるほど。分かりやすいです。具体的に優良高配当株の例を教えていただけますか。

ひっきー 例えば、信用保証業務や損害保険の代理業務を手掛ける全国保証です。2022年末にかけて株価が上昇し、配当利回りは低下傾向ですが、3%近くを維持しています。22年3月期から連結決算に移行した同社の業績は実質増収増益です。新設住宅着工は頭打ち気味ですが、金融機関による貸し出し競争が続いており、住宅ローン市場は依然堅調に推移しています。堅実な経営が強みで、過去の年間配当金の推移を見ると、連続増配企業であることが読み取れます。

まゆ 確かに安定して増配し続けている企業は魅力的ですね。でも、より高い配当利回りの株は投資対象にならないのでしょうか?

ひっきー 高配当株投資は、単純に配当利回りが高い株を買えばいいわけではありません。配当利回りでスクリーニングをかけると、例えば10%以上の株が出てくる場合があります。最近で言うと、活況の海運株がその類いです。

国内海運最大手の日本郵船を例に取ってみましょう。同社の年間配当額は510円。同社の株価は3198円(1月23日時点)なので、配当利回りに直すと、15.9%と計算できます。もちろん、配当利回り15.9%は相当高く、高配当株に分類されますが、継続的であるかと言われれば、かなり不確実性が高いと言わざるを得ません。なぜなら、日本郵船は海運の市況に大きく左右されるビジネスモデルになっているからです。

例えば17年3月期は業績が悪化し、大幅赤字を計上したため、無配となっています。海運株は市況によって大きく変化するということを頭にとどめておきましょう。

配当性向は50%以内に

まゆ 最後に、4つ目のポイントは何でしょうか?

ひっきー 4つ目は、「配当性向が50%以内であること」です。配当性向とは、純利益をどのくらい配当に振り向けるかを示す指標です。配当性向の割合は「1株当たりの配当金」÷「1株当たりの純利益」×100で求めることができます。配当性向が高ければ、純利益の多くを配当金として株主に配っているため、配当金を増やす余地は小さいと言えます。反対に、配当性向が低ければ、その分配当金を増やす余地が大きいと言えるでしょう。

まゆ 理屈は分かりましたが、どうして50%以内という数値が目安となるのですか?

ひっきー 考え方はとてもシンプルです。万が一、業績が悪くなって純利益が半分になったとします。配当性向が50%以内であれば、純利益が半分になっても過去と同じ額の配当金を出すことが可能です。配当金が継続して出れば、「業績の悪化+配当金の減額」のダブルパンチによる株価下落を避けることができます。

なお、純利益が半分になるような業績悪化は、これまでに紹介した条件に当てはまる会社であれば、めったに起きないと考えられます。「配当性向50%以下」はある程度信頼できる条件だと言えるでしょう。逆に配当性向は高ければ高いほど良いわけではなく、常に業績とのバランスが重要です。

ちなみに配当性向などを指標として優良株を探す際は、ネット証券などで使える投資用ITツールでスクリーニングすると探しやすいです。使ってみてくださいね。

避けるべき高配当株

まゆ ここまで安定高配当株を探すための4つのポイントを学んできました。逆にリスクの高い高配当株は、どのように見つければよいのでしょうか。

ひっきー 過去の例として、家具販売の大塚家具を紹介します。同社は、家電量販店最大手のヤマダホールディングスによる子会社化に伴い、現在は上場廃止となっています。そのため、高配当株のイメージはないかもしれませんが、16年には配当利回りが7%台と高配当株の筆頭でした。

まゆ かなり高い数字ですね。

ひっきー そうなんです。しかし18年には無配を発表。高配当株ではなくなってしまいました。経営不振による業績悪化により、配当を出せなくなってしまったからです。高配当株の時代は一瞬で終わってしまいました。このような見せかけの高配当株に投資してしまうと、期待通りに配当が受け取れなくなるばかりか、株価の下落による損失を被ってしまいます。

配当性向から見る異常さ

ひっきー 大塚家具の配当性向を見ると、12年、14年、15年に配当性向が100%を超えています。100%を超えているということは、会社が稼いだ利益以上に配当金を出しているという意味になります。

まゆ 15年は400%以上? かなり無理をしていますね。

ひっきー さらに16年には配当性向が「─(算出不可)」となっていますが、これは1株当たり当期純利益がマイナスになっているため。このような状況でも、1株当たり配当金は80円を維持していました。赤字の状態で配当金を出すと、会社から現金が流出します。将来的に配当金を出し続けるのが難しくなるため、赤字なのに配当金を出している会社は要注意です。

同社は15年に配当金を前期比2倍の80円に引き上げていますが、これは特殊な事例。その目的が「利益の還元」ではなく「委任状の獲得」なので、長く続くかどうかは分かりません。

まゆ なるほど。委任状を獲得するのが目的だから、その場限りかもしれないってことですか?

ひっきー そうです。大塚家具の例から分かるように、利益の還元を目的とする増配でなければ、近い将来に減配や無配があり得るので、注意が必要です。

(竹内弘樹=ライフパートナーズ)

日経マネー2023年3月号 特選 高配当株&優待株で勝つ
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2023/1/20)
価格 : 800円(税込み)
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