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株投資の民主化運動、バイデン規制試す 舞台は議会へ

投資家のSNS(交流サイト)「レディット」の掲示板「ウォールストリートベッツ(WSB)」でやり取りした若者投資家集団が空売り系ヘッジファンドを締め上げて勝利した事例は、「株式投資の民主化運動」とミレニアル世代の喝采を受けている。一方、WSB上で「レジェンド」氏が投資初心者を扇動したのではないか、との「価格操作」「共謀」容疑も浮上。特にエリザベス・ウォーレン上院議員率いる民主党急進左派を中心に規制強化論も強まっている。

レディットを巡る「事件」は米議会の公聴会開催に発展=ロイター

そもそもトランプ政権時代の規制緩和で当局の米証券取引委員会(SEC)が骨抜きにされた、との認識が根強く残る。とはいえ、闇雲の規制では「民主化運動弾圧」としてミレニアル世代の反発を招きかねない。バイデン米大統領は微妙な立場に置かれた。民主党内でも賛否両論、異音が目立ち始めている。

そこで本件関係者を招き議会公聴会がリモート形式で開催される運びとなった。赤いバンダナのラフないでたちがトレードマークの「レジェンド」氏が、スーツ姿で登場するのか。一般メディアまで注目の騒動になってきた。若者投資家の自殺や家族の訴訟まで起きている。親側は「自慢の孝行息子がプロにあおられた」と憤る。

かくして投資交流サイトから起きた「事件」が、経済メディアの報道から、政治的・社会的問題に広がりを見せている。

折から若者世代のバイデン氏への批判が強まる事例も同時進行的に発生している。新型コロナウイルス禍を巡る救済対策の一つである奨学金返済免除につき、バイデン氏が待ったをかけたからだ。民主党上院トップのシューマー院内総務などが1人5万ドルまでの免除を提案したが、バイデン氏は珍しく語気を強め「それはならぬ」と一蹴したのだ。「結果的にエリート学校の学生救済になる。1人1万ドルに抑えよ。予算配分は高校生以下の教育支援を優先すべきだ」との論調である。ここでも、世論、そして党内にも賛否両論が渦巻く。

このような政治環境の中で開催される投資交流サイトに関する議会公聴会。呼ばれたのは、まず、「レジェンド」氏。若者投資運動の受け皿となったロビンフッド証券。さらに同社にリベートを支払い売買注文の値付け業務を請け負っていたシタデル・グループ。空売りを締め上げられたヘッジファンドのメルビン・キャピタル。そしてレディット。いずれも最高経営責任者(CEO)級人物が出席予定だ。

すでに米司法省、SEC、そして米商品先物取引委員会(CFTC)が調査に乗り出している。ロビンフッドが取引時間中に一時業務停止したことや、メルビンにシタデルが資金支援したことなどが問題視されている。

そもそも、株を借りて売るという行為は荒っぽく投機的で規制すべし、との議論も根強い。対して、市場側の言い分は「空売りは時に相場の警察官役を果たす。投機的買いが席巻するような事態に売り手として介入。市場の混乱を収める」というものだ。

なお、「レジェンド」とされる元ミューチュアル生命保険勤務(本年1月末退職)で投資家教育担当ディレクターだった人物は、事前に声明文を発表。共謀など論外。既存業界との利害関係もなく、ゲームストップ株購入も、自らの分析で将来性を見込み買いを入れたまで、と主張している。とはいえ、生命保険会社在籍中に、ユーチューブで赤いバンダナ姿で5時間以上もディスクジョッキー風にしゃべりまくることが、本人が主張するような「投資家教育活動の一環」に当たるのか。そもそも同氏のハンドルネームには放送禁止用語が入っている。周囲の目は厳しい。

筆者もWSBに実名でアカウントを作り参加してみた。カリスマ的存在の人物が数人おり、初心者たちを鼓舞しているやり取りが目立つ。「売るな」「あと一息」「がんばろう」などの励ましから、もうけ話自慢、大損嘆き節など、秒単位で世界中から書き込みが集中している。興奮状態で俗語が乱れ飛び、書き込み状況はかなり汚れた感じだ。急騰を示すロケットの絵文字。合言葉は「I like the stock」。

このネット上の世界にメスを入れることは容易ではなかろう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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