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ドル安かドル高か、2022年米中間選挙も視野に

市場は「ブルーウエーブ宴(うたげ)の後」状態で、夜明けのコーヒーのほろ苦さを味わっている。青い波というより青いさざ波程度か、との厳しい現実をかみしめている。

米ダウ工業株30種平均も3万1000ドルの大台に乗せた後は、一進一退の地合いだ。注目の米10年債利回りも12日は1.18%まで上昇後、1.11%まで急落した。米金利上昇を受け反発した米ドル相場も、ドルインデックスが90.6から90.0まで再び下落している。

ブルーウエーブといっても、冷静に見れば下院は222対211まで議席数差が縮小して共和党躍進が目立つ。上院も50対50ということは、1議席でも空席が生じれば、民主党過半数はおぼつかなくなる。大統領選も選挙戦後半の猛烈な追い込みでトランプ現大統領は7400万票を獲得している。議会乱入という大汚点を残し支持者が徐々に離反してゆくが、弾劾ともなればコアのトランプ熱狂的支持者たちは陰謀説のもとにますます結束を固めるであろう。共和党としても、トランプ氏を見捨てることはできない。2022年に控える中間選挙も激戦必至だからだ。トランプ氏が「応援演説」に駆り出される州も少なくなかろう。

民主党側から見れば共和党との妥協を強いられる状況だ。バイデン次期大統領も、長年の盟友で今や「第三の大統領」とさえ言われるマコネル共和党上院院内総務との「腹芸」を駆使せねばなるまい。

さらにワシントンでの議会乱入事件を嫌気して造反する共和党議員の取り込みももくろむであろう。

民主党内急進左派への配慮も欠かせない。

かくして複雑化する政治情勢の中で、まずは民主党バージョンの大型財政投入案を、共和党財政均衡派の意見も考慮したうえで、「ダイエット=減量」せねばなるまい。

いっぽう、株式市場の視点で気になるバイデン増税はできるだけ先送りして内容も希薄化されそうだ。法人増税案もトランプ減税による現行21%から28%への増税をうたってきたが、25%程度に収めるとの見方も浮上してきた。とはいえ、国外利益への課税の観点からGAFAは狙い撃ちにされそうだ。ここは、ツイッターとフェイスブックによるトランプ氏アカウントの全面停止に関する議論と重なり、超党派で受け入れられるところであろう。

市場の視点で最も不透明な部分は「ドル安かドル高か」だ。

ここはブルーウエーブ祭りの勢いで、兆ドル単位の複数回財政投入をマーケットは見込んでいた。まず、バイデン次期大統領就任直後の初仕事として、追加的個人給付金、3月に失効する失業保険上乗せの延長、そして地方自治体への財政支援が期待されている。次に、選挙公約でもあるグリーンエネルギー関連分野インフラの大型投資。そこまで実行すれば、米10年債利回りは1.5%程度まで上昇する可能性が市場では語られてきた。金利差要因で外為市場ではドル高に振れた。しかし、共和党への配慮は一転、ドル安要因となる。

いっぽう、金融政策面では、米連邦準備理事会(FRB)がゼロ金利政策を23年まで維持する「フォワード・ガイダンス」を明示している。インフレ率が2%を超えても「オーバーシュート」を容認して超緩和を継続する姿勢だ。それゆえ、21年はドル安・円高の年と予測されてきた経緯もある。

しかし財政投入によりコロナ後の経済回復が早まれば、パウエル議長が「量的緩和縮小」いわゆるテーパリングに言及するかもしれない、との臆測も絶えない。13年のバーナンキショックをいまだに苦い記憶として残している市場は疑心暗鬼だ。12日にはボスティック・アトランタ連銀総裁がテーパリングの可能性を完全否定しなかったことが注目されたほどだ。

マーケットがリスクに敏感になると、特にニューヨーク(NY)外為市場では米ドルが低リスク通貨として逃避マネーにより買われる事例も無視できない。

かくしてNY市場内では、ドル安派とドル高派に意見が割れてきた。昨年から続いてきたドル安傾向がボトム・アウト(終止符が打たれた)とする見解と、ドル高は一過性のポジション調整との見解が交錯している。

ドル円相場に関しては、100円を突破するような円高にもならず、110円までの円安も見込めず、結局、膠着状態との見方がNY市場では目立つ。動きの少ない市場にマネーは集まらず、特に、ビットコイン市場の派手な値動きに去勢されたかのごとき状況もあり、ドル円相場は「圏外」扱いだ。

予測不能なトランプリスクからは解放されたが、バイデン氏の「腹の内」とパウエル氏の真意も測りかね困惑気味のマーケットである。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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