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株上昇軌道「現実買い」局面に(石金淳)

三菱UFJ国際投信チーフファンドマネジャー

1月20日、米国でバイデン新政権が発足した当日、米国の株式市場では、ニューヨークダウ工業株30種平均指数、S&P500種指数、NASDAQ総合指数がそろって過去最高値を更新しました。その翌日の21日、国内では日経平均株価が1990年8月以来、約30年5カ月ぶりの、TOPIX(東証株価指数)は2018年2月以来、約2年11カ月ぶりの高値水準に達するなど、株価は国内外で足元かなり堅調に推移しています。

ただ、今申し上げた時点で米国株(S&P500種指数)は、新型コロナウイルスの世界的な流行開始直後につけた昨年3月の安値から72%、日本株(TOPIX)は50%も上昇し、その直前につけた流行直前の同年2月につけた高値からみてもそれぞれ6%、7%上昇しており、株式市場には高値警戒感が醸成されつつあるとみています。また、昨今の新型コロナウイルス感染再拡大によるロックダウン(都市封鎖)や行動制限の広がりによって世界景気の回復が相当遅れるという懸念、あるいは最近の米国の長期金利上昇への警戒感などから、株価上昇が続くことへの危うさを不安視する見方もあると思われます。それでは、国内外の株価は今後まもなく急落し、大勢上昇トレンドは終了するのでしょうか。

私は、株価の一時的な反落、もしくはスピード調整はあり得るものの、当面、少なくとも今年についてはそうした可能性が低いと考えています。それは、昨年、国内外の株価が、新型コロナウイルスの感染拡大による景気への悪影響に対して打ち出された強烈な金融・財政両面からの経済支援策への期待等を背景に急反騰した後、今年は経済支援策の効果が徐々に浸透するとともに、製造業を中心に景気回復が本格化することなどが株価を強くサポートすると思われるからです。言い換えると、目の前の景気が低迷していても将来の回復を織り込む形で株価が上昇する理想買いから、景気回復の本格化を確認しながら株価が着実に上昇する現実買いに移行する段階に、まもなく入ると考えます。

世界的な景気回復本格化の兆候の例として、①米国で景況感の著しい改善や住宅部門の好調、自動車販売の急回復などがみられること②世界の半導体販売額の回復鮮明化、および最先端半導体生産基地である台湾の昨年12月の電子製品輸出受注が前年比58%も増加したこと③日本の昨年12月の輸出が前年比で2年1カ月ぶりにプラスに転じたことが挙げられます。

昨年12月、日米欧の政策当局は金融・財政政策の強化・堅持を改めて明示しましたが、直近では米国でバイデン新政権が個人給付金の増額を含む1兆9000億ドル規模の追加経済支援策を提唱し、かつ新型コロナウィルスに対するワクチン普及が見込まれることなども考慮すると、米国を中軸として世界景気の回復は今後本格化し、そのことは国内外の株価を強くサポートすると考えます。

ただ、昨今米国で長期金利(10年国債利回り)が上昇しています(昨年3月、一時0.3%台まで低下した後上昇し、年明け直後に1%台を超えた)。国際商品市況が上昇するなかでの景気回復の鮮明化とともに、インフレ懸念から長期金利上昇が加速し、株価が大きく下落するとの指摘もあると思われます。しかし、米国の雇用に着目すると、就業者数が新型コロナウイルス流行直前のピーク時からなお約900万人減少しているなど雇用の回復が遅れています。このため、インフレに影響が大きい賃金上昇が起こりにくく、さらに1月14日、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は早期の金融緩和の解除開始を事実上否定したことなどから、長期金利の急な上昇は見込みにくいと考えます。

なお、米国の景気先行指数(前年比)が底入れしてから浮上し、その後プラス圏で推移する大半の期間、株価は概して上昇基調で推移していますが、当該原稿の執筆時点(1月下旬)では、昨春に底入れしてからまだ日が浅いと思われます。

世界的に株価は短期的な過熱感から一時的に波乱含みとなることはあり得るものの、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の現実的な改善を織り込む形で今後も概ね堅調に推移し、日本株も当面は上昇トレンドを持続すると考えます。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。
石金淳(いしがね・きよし)
1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJ国際投信)転籍。16年12月より現職。

[日経ヴェリタス2020年2月7日号]

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