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トヨタグループ 業績コロナ前越えのワケ(苦瓜達郎)

三井住友DSアセットマネジメント シニア・ファンドマネージャー 

2020年10~12月期決算が出揃いましたが、全般的な印象としては、製造業関連を中心に好決算が相次いでいる点が目を引きます。中国を先頭として、世界的に新型コロナウイルス流行による経済的打撃が薄らいできた一方、各社が緊急施策を含め、費用面では抑制モードを継続していることが要因です。

特に自動車関連の回復は顕著です。新型コロナウイルスによって逆に需要が刺激された面もあり、外出抑制がある程度緩和されると、多くの国で販売台数が急回復しました。

中でも、トヨタ自動車とその系列部品メーカーの利益改善は目を見張るものがあります。10~12月期だけの売上高営業利益率を見ると、10%前後と自動車・自動車部品業界としては異例の水準に達している企業が少なくありません。

トヨタ系各社の業績が好調な理由としては、まず販売台数の回復が業界内でも早かったことが挙げられます。もともと主力車種のRAV4等が収穫期を迎えていたことに加え、市場回復が最も早かった中国において、ハイブリッド技術を武器としてシェアを急速に高めていることが要因です。また、生産面においても、新型コロナウイルスの影響が欧米メーカー等に比べ相対的に小さく、順調に製品を供給できた模様です。

さらに、部品各社は海外展開や電子化に際して、拠点の立ち上げ費用や研究開発費などの先行負担を強いられてきましたが、今回の危機に際して経費の見直しを進めたことも利益率の改善につながりました。費用減少に関しては、緊急的なコスト削減施策や新型コロナウイルス流行による出張減少といった一時的要因による部分もあり、流行が沈静化するにつれて効果が縮小していく面もあるでしょうが、危機対応によってあぶり出された無駄な部分に関しては、元に戻すことはないでしょう。

2021年に入っても、当面は好調な業績が続く見込みです。目下最大のリスク要因は、半導体不足でしょう。比較的低価格で汎用的な半導体に関しては、ここ数年間、中国メーカー以外はあまり積極的に設備投資を行なってこなかったこともあり、多少の需要増加や供給制約が生じただけで一気に物不足が表面化したのです。品種によっては、新規に追加商談を持ちかけた場合、納期が半年以上かかるケースもあるようです。しかし、同社はこの問題に関しても、迅速な対応や高い交渉力を要因として、他社よりも悪影響を小幅にとどめることができそうです。

中長期的には、電動化/脱エンジンが大きな課題となっています。先行してエンジン車に対する規制スケジュールを進めている欧州に加え、日本においても政権交代に伴って電動化の道筋が示され、さらに米国でも政権交代により大胆な環境政策が導入される見込みです。政治的な揺り戻しがあっても、大きな流れとしてこの方向に向かっていることは確かでしょう。

燃料を用いず、電池に蓄(た)め込んだ電力を用いて走行する狭義の電気自動車に関しては、同社はいまのところあまり存在感を示してはいません。この分野では、米国のテスラ・モーターズが現状では圧倒的に目立っています。しかし、同社はいろいろな意味で非常に特殊な会社であり、すくなくとも大衆車の分野で覇権を握ることは難しいと考えています。

完成車に関してはあまり目立っていませんが、電気自動車の基礎技術に関してはトヨタも積極的に研究開発を行なっています。特に、有機溶剤を用いず安全性が高いとされる全固体電池に関しては、世界の最先端にあると目されています。

また、ガソリンエンジンを補完する形で小型の電池とモーターを駆使するハイブリッド車に関しては、同社は圧倒的な実績を有しています。いきなり二酸化炭素排出量ゼロを目指すのではなく、現状の延長線上で排出量削減を目指すのであれば、ハイブリッド車が最も現実的な解でしょう。

水素を燃料とする燃料電池車に関しても、同社は世界の最先端を走っています。もし社会に必要なエネルギーをすべて自然エネルギーで賄うとすれば、航続距離が必要でかつ専用インフラを整えやすい長距離トラック・バスに関しては、燃料電池車が最もふさわしいのではないかと素人なりに思っています。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。
苦瓜達郎(にがうり・たつろう)
1968年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年大和総研入社。アナリストとして窯業やサービス業の担当を経て中小型株を担当。2002年に当時の大和住銀投信投資顧問入社。中小型株ファンドの運用に携わる。

[日経ヴェリタス2021年2月28日付]

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