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株価、財政を支えに来年も上昇続く(石金淳)

三菱UFJ国際投信チーフファンドマネジャー

11月上旬の米国の大統領選と連邦議会選の頃から世界的に株価が大きく上昇し、米国ではダウ工業株30種平均指数が過去最高値を更新して3万ドルを超え、日本では日経平均株価が約29年半ぶりの高値に達するなど株式相場の堅調さが続いています。

一方、今秋以降は新型コロナウイルスの感染が再拡大しています。米国では、1日当たりの新規感染者数や入院患者数が過去最多を更新し、欧州ではロックダウン(都市封鎖)を含む規制強化などが実施されています。国内でも、感染再拡大に伴い政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」の制限などが広がっています。

こうしたなか、11月21~22日に開催された20カ国・地域(G20)首脳会議では、世界景気の下方リスクへの警戒感が示されました。12月1日には経済協力開発機構(OECD)が、新型コロナウイルス感染の再拡大によって世界景気の回復力が弱められているとして、2021年の世界の実質国内総生産(GDP)成長率を9月時点の5.0%から4.2%へと下方修正しました。世界的に景気への懸念が再燃しつつあります。

しかしながら筆者は、世界景気の腰折れによって株価が急反落するという展開は想定していません。基本的には世界的な株価の上昇基調が持続すると考えています。主要国の景気支援への強い姿勢が少しも揺るがないうえ、支援策が強化される見通しであることが理由です。

これには、米英でワクチンの接種が始まったことや、主要国中銀の強力な金融緩和の効果(企業の資金繰りや信用リスクの抑制、および各種ローン金利の低下など)も含まれますが、それ以上に財政政策が重要であると考えます。コロナ禍で落ち込んだ民間需要をカバーする手段として、財政支出拡大ほど強いものはないと思うからです。

OECDは新型コロナウイルス感染の再拡大に伴い世界景気の回復力が落ちることに加えて、緊急的な財政措置が期限切れとなって起こり得る「財政の崖」を回避するため、各国政府が財政面からの支援を継続すべきだとの見解を示しました。さらに、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長や欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も、金融緩和とともに積極的な財政政策を求める異例の発言を繰り返しています。国際機関や主要国の政策当局が財政政策の維持・拡張を明確に主張していることは幸いと思われます。

こうしたなか、米国では、数カ月間停滞していた財政面からの追加支援策について、12月2日、民主党指導部が超党派議員による9000億ドル強の経済支援策案に支持を表明。その後、共和党の有力議員も前向きな姿勢を示し、同支援策成立に向けた議論が再開されたもようです。

米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領は、インフラ投資の拡大を主張していますが、上院は共和党が過半数を取る可能性が高く(共和党はすでに半数を確保、ジョージア州の2議席は21年1月5日に決選投票)、バイデン氏が主張する富裕層などへの増税は困難とみられます。つまり、米国の財政政策の先行きには明るい兆しが現れつつあります。

財政政策の拡大は財政赤字増大を通じて債券利回りの急上昇を招くと危惧する見方もあるでしょう。しかし、世界景気はコロナ禍で大きく損傷したあと回復の端緒についたばかりであること、主要国中央銀行が国債を含む大規模な資産購入の維持・積極化を示唆していることなどを鑑みると、OECDが指摘するように公的債務は増えても借り入れコストが低い状態が当面続くのではないでしょうか。

実際、米国の財政赤字の名目GDP比は17~19年の5%前後から20年は20%以上に拡大する見込みですが、米10年国債利回りは直近でも過去最低に近い水準にとどまっています。この傾向は欧州や日本などの主要国でも同じです。

むしろ、先行きで警戒すべきなのは、景気の本格回復が十分に達成されたあとに起こり得る金利の本格的な上昇です。ただ、当面はその心配は不要だと考えます。

以上のような観点から、財政政策の拡張が続く一方で国債利回りの大幅な上昇が抑えられ、株価は来年にかけて世界的に上昇トレンドを持続すると考えています。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。
石金淳(いしがね・きよし)
1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJ国際投信)転籍。16年12月より現職。
[日経ヴェリタス2020年12月20日号]

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