活発化するロシア軍の攻撃 小泉悠さんらとThink!

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。5月20~27日の記事では、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠さんが「活発化するロシア軍の攻撃」を読み解きました。このほか「IPEF13カ国参加」「ワークマン・ダイソー、銀座初進出」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「活発化するロシア軍の攻撃」をThink!

【小泉悠さんの投稿】ウクライナ東部での事態は、3ヶ月目を迎えたこの戦争の天王山になると思います。セヴェロドネツク周辺に展開するウクライナ軍主力の後方をロシア軍が遮断し、現時点までに包囲の環が閉じたとみられています。以前から予測されてきたことではありますが、火力がものをいう平地の戦いではやはりロシア軍は侮れない戦闘力を発揮しています。これでウクライナ軍主力が包囲殲滅された場合、ウクライナ側はロシアの再攻勢を押し止められなくなる可能性も排除できません。実際にはロシア・ウクライナ双方の損害、動員能力、西側の軍事援助など考慮する必要がありますが、ウクライナ勝利で終わりそう、という少し前までの楽観論は修正する必要がありそうです。
「IPEF13カ国参加」をThink!


【深川由起子さんの投稿】IPEFは中間選挙を前にFTAにコミットできないアメリカの弱さを宣言したようなもの。FTAではないからWTO整合性が問われることもなく、柔軟性は担保できますが、多くの国は美味しいところの食い逃げを図るでしょう。自由化水準の低いRCEPから脱落したインドさえ参加できる枠組みにどれほどの包括的効果があるのか。困難でもTPP復帰で米国に釘を刺したのはよかったです。中国にはレベルの低いRCEPの追加関税引き下げやCPTPP加盟での揺さぶりカードも残るのですから。韓国はライバル・台湾のいない枠組みでの「主導的役割」を宣言。CPTPP加盟を視野に日本の半導体関連輸出措置見直しに強気に出て来ると思います。
「ワークマン・ダイソー、銀座初進出」をThink!


【池上彰さんの投稿】銀座のプラスのイメージはいまも健在ですね。かつて西武デパートが有楽町に出店する際、「銀座店」と名付けたかったのに、銀座の商店会から反対が出て、しぶしぶ「有楽町店」と名付けた経緯を思い出しました。海外の高級ブランド街でもファストファッションの店があるのはごく一般的です。「銀座のイメージが落ちる」のではなく、「銀座出店でイメージアップ」としての価値があることを示していますし、またインバウンドの客が銀座に来たとき、「安売り」のイメージのチェーン店は世界ブランドになる契機となるでしょう。
「医療の職務シェア」をThink!


【中室牧子さんの投稿】私は規制改革推進会議の有識者委員として、医療・介護WGには毎回出席していたが、所管官庁である厚労省と毎回激しい議論の応酬があり、会議の時間もたびたび延長になった。介護保険事業者による行政手続きについては、厚労省は地方自治を理由に自治体に対してものを言えず、その結果、人手不足に喘ぐ介護事業者が、自治体毎に異なる大量の申請や報告の負担を負っているというのは記事の通りである。例えば代表者が変更になったことの届出で100以上の申請書を提出させられた事業者もある。ケアに直結しない間接業務負担の軽減が喫緊の課題であり、厚労省には自治体ごとのローカルルールの撤廃とデジタル化の推進を求めたい。
「マレリ、支援要請」をThink!


【諏訪貴子さんの投稿】企業にとっての私的整理は、企業存続の為に重要と考えます。しかし現在、私的整理を行う場合は債権者の全者の賛同を得なければならない。大手企業になるほど債権者の数は多くなる。非常に私的整理は難しい状況となっている。日本の企業も私的整理の段階で裁判所において債権者の同意が過半数を占めれば私的整理が出来るという仕組みを取り入れるべきと考えます。
「メタバース広告販売」をThink!

【福井健策さんの投稿】メタバースの特徴は、圧倒的な没入感と、それによる「滞留時間」の長さです。これは広告ビジネスにはうってつけですから、近い将来、メタバースの主戦場は広告ビジネスになるだろう、と言われます。参入は、遅すぎたくらいでしょう。ただし、異次元の没入感と滞留時間は、新たな詐欺や、不当な広告・勧誘といった問題と結びつく可能性は十分あります。特にロブロックスは児童の利用が多いため、広告主やユーザーは、自分達の広告がどう使われ、どこに自分達を導くのか、よく注視していくべきでしょう。
【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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