コロナ予備費 「Think!」エキスパートが読み解く - 日本経済新聞
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コロナ予備費 「Think!」エキスパートが読み解く

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。今回は、「コロナ予備費」を中心に、国費の使われ方に関する主な投稿をまとめました。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)

「コロナ予備費の不透明感」をThink!

コロナ予備費12兆円、使途9割追えず 透明性課題(4月22日)
政府が新型コロナウイルス対応へ用意した「コロナ予備費」と呼ばれる予算の使い方の不透明感がぬぐえない。国会に使い道を報告した12兆円余りを日本経済新聞が分析すると、最終的な用途を正確に特定できたのは6.5%の8千億円強にとどまった。

【野崎浩成さんの投稿こうした負担を背負う次世代を思えば、憤りしかありません。社会保障費などの非裁量的支出増加が余儀なくされる中で、テーマ的裁量的予算は各省庁の権益争奪の対象となる構図は避けられません。会計検査院や今回の日経の切込みなどに依存したガバナンスモデルには限界があります。予算執行状況についての妥当性を、透明度の高いディスクロージャーを求めたうえで、(後年度の概算要求上の制約や、問題ある執行を実施した責任者の処遇など)必罰のルール付けを行うことで、相応の抑制効果が期待できると思います。

ロッシェル・カップさんの投稿危機の際に政府が予算を緊急に動かす必要があるのは否定できません。それができなければ、急に発生する問題に対処するのは難しくなります。でありながら、政府は納税者に対する責任として、どのように予算を使っているのかを明確にする義務があります。それができていないのは非常に残念です。英語のslush fund(裏金)という言葉が頭に浮かびます。

コロナ予備費「11兆円」追えず 「国費解剖」(5月13日)
日経電子版が4月22日に報じた予備費の問題がSNSで「消えた11兆円の説明求めます」と話題になっています。自然災害などに柔軟に対応するため国会の審議を経ずに政府の判断で拠出できる仕組みですが、新型コロナウイルス対応で額が膨らみながらも詳しい使い道が検証できないことが分かりました。

【小黒一正さんの投稿予備費の制度は、憲法第86条(予算の事前議決の原則)や憲法85条(事前に目的を限って国会の議決を受ける原則)の例外であり、事後的に国会の承諾を得させ、従来は抑制的に運用してきましたが、財政民主主義の観点から、度々、国会でも問題になっています。例えば、予備費の規模を巡る論争です。通常の予備費は数千億円程度ですが、かつてのリーマンショック時に麻生内閣が策定した「生活防衛のための緊急対策」でも、通常の予備費とは別枠で、使途を限定した予備費として1兆円もの経済緊急対応予備費が計上されました。今回のコロナ禍での教訓も踏まえ、予備費の制度を民主的にどう統制していくか、議論を深める価値は高いと思われます。

「予備費の使途承諾ルール」をThink!

予備費、使途承諾ルール20年守られず 国会の検証甘く(6月14日)
政府が災害などに備えて用意した予備費に対する事後検証のルールが守られていない。予備費をどう使ったか次の国会への報告が義務づけられているが、提出した国会で承諾された例は20年間なかった。

【上野泰也さんの投稿予備費は、国会がコントロールする財政民主主義における例外的存在であり、政府が裁量でその使途を決めることができる。国会によるチェックは事後的に行われる。だが、記事にあるように両院のいずれかが後日に予備費の使途について不承諾の決議をしても、世の中には何の影響力もない。すでに支出されたものはそのままである。このように、実態として予備費に対する国会のチェックは効かないわけだが、形式的にも効いていないことを記事は明らかにした。ルール通りに国会で承諾手続きが行われないというのは、由々しき事態と言わざるを得ない。国会日程の問題のようだが、審議を行う委員会をジョイントにするなど、工夫の余地はあるのではないか。

「目標なき国の政策」をThink!

目標なき国の政策乱立 3割が成果検証できず(3月22日)
政策効果を検証できない国の事業が乱立している。毎年度の収支や進捗を記す「行政事業レビューシート」を日本経済新聞が点検したところ、終了年度の成果目標を示していない事業が3割強に達した。

【中林美恵子さんの投稿93年に施行された政府業績成果法(GPRA)を含め、米国では様々な改革努力がなされてきました。GPRAの始動時にはその運用を巡り右往左往した(当時上院予算委員会勤務だったので)経験をもちます。その体験から思うことは、チェック&バランスの重責を担う議会の役割の大きさです。GPRA自体、議会が主導した法律であり、戸惑ったのは行政の方でした。最初は渋々どころか不平不満もありましたが、立法府の決定には従う以外なく、結局は前進あるのみでした。国防総省なども最初ピリピリした時期があり、議会側の私にペンタゴンから迎えの車が来て「こんなにキチンとやっています」という説明を延々と受けたことを思い出します。

「目標なき国の政策」をThink!

国の委託、競争働かず コロナ下で強まるコンサル頼み(6月7日)
国の事業の民間委託先選びで競争が働かなくなってきた。日本経済新聞の調べでは、新型コロナウイルス対策を多く担った大手コンサルティング会社と広告代理店への2020年度の委託比率は21%と、前年度から10ポイント上昇。金額は4倍強となった。

福井健策さんの投稿重要な記事ですね。政府部内にしっかりした委託の専門家を置くのも重要でしょう。同時に、それを受託できる多様な受け皿の育成です。今回挙がっている多くは営利追求を目的とする団体ですから、そう動くのは当然ですが、対象分野に知識もつながりもない団体が事業を受託した結果の混乱と遅延も、この数年いたる所で見られた光景だと思います。その分野を支援する使命と知識、つながりを日常的に持っている非営利の中間団体がしっかりと育っていること。そうした中間団体が、政府とも、対象業界とも適度な緊張関係を持って進める事業の体制が、もっと育つべきように思います。

平日のニュースに投稿がつく「Think!」。これまでの投稿一覧と、エキスパートのみなさんのご紹介は次のページから。

【投稿一覧】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート紹介】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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