米が資金枯渇回避へ前進 中林美恵子さんらとThink!

日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。12月3~10日のニュースでは、早稲田大学教授の中林美恵子さんが「米の債務上限引き上げ」を読み解きました。このほか「北京五輪の外交ボイコット」「10万円相当給付」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「米の債務上限引き上げ」関連ニュースをThink!


【中林美恵子さんの投稿】民主党が単独で(つまり単純過半数で)採決すべきだというのが共和党の主張でした。民主党は、初めから単独で決めることができました。しかし、財政規律に反する投票を単独で行うとイメージが悪く次の選挙で不利になるため、共和党を同罪にしたかったのです。この度の措置は、とうとう民主党が折れたといえます。そもそも、民主党が政府にデフォルトを起こさせる筈もありませんから、市場では既に民主党が折れることを折り込んでいました。デフォルトは(少なくとも年内には)ないという点で、多くが想像したとおりの結果になったといえるでしょう。
「北京五輪の外交ボイコット」関連ニュースをThink!


【ロッシェル・カップさんの投稿】これは良い判断だと思います。人権問題について中国へ強いメッセージを送りながら、選手たちへの悪影響は少なくする。私の大学時代のスポーツコーチが、80年五輪に対する米国の全面的ボイコットにより参加が叶わずガッカリしたと話していたのを今も覚えています。
この件に関する英文報道によれば、ホワイトハウスはウイグル民族をはじめ中国で起きている人権侵害が続くため、「business as usual(通常の対応)」が出来ないと強調しています。他の政府も一体となって中国に対して同じ態度を取っていただきたい。
「10万円相当給付」関連ニュースをThink!


【小島武仁さんの投稿】クーポンVS現金、事務コストに加えて、「目的外使用」についても注意が必要な話と思います。あくまでスタンダードな経済学からということで話しますが、現金以外の方法で使用方法を限るのは多くの場合悪手とされます。理由は、用途を狭めると受け取り側が最適なものを選ぶ邪魔になるからです。
もちろんもっと複雑な問題がないとも限らず、例えば今回だと受け取り手が特に「悪い」使い方をすると言う心配があれば用途を限るのもやむなし、になりますが、そういう「パターナリスティック」な介入をするならエビデンスが欲しいところです。もし今すぐにエビデンスがなくても、事後検証はぜひやるべきと思います。
「東証の新市場への移行申請」関連ニュースをThink!


【白井さゆりさんの投稿】従来日本企業は東証1部上場が知名度確保と優秀な人材の取り込みに不可欠と考えてきた。しかし世界の流れをとらえて2015年コーポレートガバナンスコード導入以降、企業の中長期的な稼ぐ力の向上と環境社会面での持続性強化の要請が強まっており、今後も段階的に強化されていくはずだ。世界のESG投資家や排出量正味ゼロを掲げる金融機関が投資先企業に行動変容を求める活動が活発化する中、プライム市場の上場企業に厳しい目が向けられており経営体制の抜本的改革を急ぐ必要がある。だが未上場企業にも焦点が移りつつあり、スタンダード市場に移行しても世界のトレンドを把握した前向きな経営改革を断行する意思が経営陣に求められている。
「オミクロン型へのワクチン効果」関連ニュースをThink!


【蛯原健さんの投稿】日本ではやや反応が薄いように感じられるものの諸外国ではかなり大きく報じられており、米国株式もこれに大きく反応し上げている。
ブースター接種の進捗や身近さもあるのか、例えばシンガポールでは国民の3割が接種を終えており私自身もモデルナではあるものの終えているし、米国でも再びワクチン在庫が地域によっては逼迫しつつあると聞く。
日本はとりあえずの緊急対策と称して世界比較で極端に厳しい水際対策を敷いたものの、失う代償も鑑み、このように科学的材料が出つつあるなか緩和についても躊躇わず決めるべきと考える。
「データサイエンス教育」関連ニュースをThink!


【鈴木亘さんの投稿】私は経済学を大学で教えているという商売柄、ビッグデータの統計解析には慣れているが、「データサイエンス」を教える気にはならない。なぜならば、大量の学生を、時には個別に対面指導しなければならない労力に対して、給料は全く増えず、コスパが悪いからだ。自分の専門科目を教え続ける方が楽である。データサイエンスの非常勤講師は引っ張りだこだが、硬直化した大学組織では、非常勤講師の単価(賃金)は極めて安く設定されており、そんなバイトもやる気にならない。要は、「経済的インセンティブ」の問題なのである。労力や需要に見合う単価がきちんと設定されれば、データサイエンスを教えようという研究者は潜在的にたくさんいるはずだ。
【投稿まとめ読み】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート一覧】
https://www.nikkei.com/think-all-experts

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